ギルティタウン 

第十話 エピローグ

罫線

 その後、アッサムはどうなったのかって?

 アッサムは一週間、母親にプレゼントしそこねたペンダントを母親の墓に飾った。そこで『 自分は絶対に画家になる 』 と誓ったのさ。 ブルータルシティで孤児になったアッサムへの風当たりは厳しくなった。親がいないというだけで、理不尽な待遇を受けたり粗末に扱われる。その度アッサムは死んだ母親の事を思い出し、生きている間に伝えられなかった『僕を育てて、守ってくれてありがとう』という言葉を心の中で呟いていた。

 アッサムは辛い目に遭うと、スケッチブックを持って街のスラムへ足を運んだ。スラムにはイングウェイが歌で助けてきた、奇形として産まれ、スラムで一生を終える孤児達がいる。彼らの絵をアッサムは何枚も描いた。見知らぬ少年のアッサムに怯え、スケッチされた孤児達は暗い表情をしている。月日と共に孤児達の絵は笑顔を見せるようになり、スラムに訪れるアッサムを歓迎するようになった。

 十代後半の孤児達はイングウェイを知っている。アッサムが親指にはめた指輪を見て『イングウェイとおそろいだね』と言った。アッサムは照れたように笑い、孤児達と『HELL / HOUND 』の曲を聴きながら、絵を描いていた。アッサムには目標が出来た。絵でスラムの子供達、世界中の人目に触れない人達を笑顔にする事だった。アッサムは働きながら絵を描き、学費が貯まるとブルータルシティを後にする。美術学校へ進み本格的な技術を身につけ、見識を広げる為、路上絵描きになり各地を転々とした。

 十数年後、アッサムは無名だが念願の画家となってブルータルシティへ帰ってくる。

 アッサムはスラムの近くに小さなアトリエを建てると、再びスラムの奇形児達を描きだした。存在を知られる事なく死んでいく者達を描き、生きた証を残すのだ。アッサムはそう考え、一日中スラムに座り込んで絵を描いている。その姿を街の住人に『変人』と称され敬遠されたが、アッサムは意にも介していなかった。

 アッサムはスラムの奇形児を書き尽くすと、世界中を旅して周るようになった。一見すると悪趣味ともとられかねない、手術途上の性転換者や死んだ胎児。手足が変形した女性、異様に肥満した少年、解剖中の屍体や小人。一般にタブー視され『 描いてはいけないもの 』 とされる人達の笑顔をひたすら描く。アッサムが絵を描く由来は人間が尊ぶべき感覚から来ている物だったが、己の美学からかその事を一切人に話さなかった為、頭のおかしい画家として扱われていた。

 アッサムは奇形の嬰児を展示している博物館に足を運んでいる。『絵のモデルとして描かせてください』と館長に頼み込むのだ。アッサムを館内に案内した学芸員は悲鳴を上げる。アッサムがホルマリン瓶から素手で嬰児を取り出し、絵を描き始めたからだ。

 学芸員は『帰れこのキチガイ!』と叫ぶと、アッサムは『薬品漬けの状態で描けというのか?キチガイはお前だ』と言い返す。学芸員は早く描き終わってくれと祈りながら、アッサムが熱心に絵を描くさまを眺めていた。完成したのは嬰児がが安らかな笑顔で眠る、グロテスクだが暖かい雰囲気に包まれた絵だった。学芸員は異形の絵に言葉を失う。アッサムが『この絵と引き替えに赤子を譲って欲しい』と交渉すると、博物館の館長と学芸員は二つ返事で了承した。

 アッサムはブルータルシティに戻ると、自分の霊園に譲り受けた赤子を埋めた。アッサムは展示される『人間』を絵で買い取り、ブルータルシティの墓地に埋葬している。周囲に変人扱いされながら、不気味で暖かい絵を描き続けた。アッサムの霊園には、奇形児の親が参拝しに来たり、埋葬された人間の親族が多数やってくる。彼らはアッサムの絵を見て、暖かい気持ちになって帰っていく。

 アッサムは『不謹慎な精神異常者』と呼ばれ、一部で激しく嫌悪されていた。
 だが、その人柄を知る人間は『あんな優しい人は見たことがない』と話す。
 アッサムは評価が両極端に分かれる不思議な画家だった。
 もうわかってきたんじゃあないかな?

 子供の名前は、かの有名な画家アッサム=ブラインド。

 世界中で個展を開く、異端の存在をモチーフに絵を描き続ける画家だ。アッサムの描く人物画はつり目で歪んだ表情の男が多い。それは憧れのボーカリスト、イングウェイをリスペクトしているからだ。アッサムの人差し指には、イングウェイから貰った指輪が今もしっかりはめられている。

 アッサムの不気味で優しい絵や、その人柄に憧れ、画家を目指す子供は少なくない。アッサムは自分が憧れていた、人に夢と笑顔に与えられる人間になれたってわけだ。

 歌で異形の孤児達を救済し、絵で救われない境遇の者達を笑顔にした、ブルータルシティ生まれの、二人のヒーロー。

 アッサムとイングウェイは、今も奇妙な友情で結ばれている。











 なんでオレがこんな話を知っているかって?
 それはオレがこの話に出てくる保安官、ブルータルリッチだからだよ。

 - FIN -


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