ギルティタウン 

第九話 親愛のシャウト

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 この街に来て、七日目の夕方。僕が教会の屋根で街の全景を描いていると、僕の隣に保安官のリッチがいた。

「やあ、小さな画家君。元気そうで何よりだ」

 リッチはにこやかにそう言うと、僕の隣に腰掛けた。

「リッチに、お願いがあるんだ。」

「なんだい?」

「今日、ブルータルシティに、僕と一緒に帰って欲しい」

 リッチはびっくりして、僕を見た。

「驚いた。てっきり、ずっとこの街にいたいって言い出すかと思ったんだが」

 僕は少し黙ってから、話し出した。

「僕だって、できることならそうしたいよ。ここはすごく楽しいし、罪人とは思えない程、街の人達は優しい。でもそれは、ブルータルシティの境遇が酷かったってだけで、イングウェイ達は、普通のことをしているつもりなんだよね。僕が『優しい』っていうと、この街の人は変な顔をするんだ。だから僕はいつまでもここにいて、その優しさに甘えてちゃいけないんだ。ブルータルシティで保安官のリッチが残酷に見えたのも、あの街の犯罪者達が残酷だったからだって、やっとわかった。母さんや、レコードショップの店長の優しさにも、ようやく気づけたんだ。それなのに、僕がブルータルシティでのつらかった出来事にフタをして、ずっとこの夢みたいな街にいるのは、逃げてるのと一緒だ。僕はどんなに辛い事があっても僕が頑張る場所、生まれ故郷のブルータルシティで生きるよ。そしてイングウェイみたいに頑張って頑張って、人に夢を見させてあげれられる人になりたい」

 僕は照れくさかったけど、今思ってることをそのまま、リッチに伝えた。

「そうだね、アッサムの言うとおりだ」

 リッチはにっこり笑って言った。

「じゃあ、街のみんなにお別れを言いに行こうか」

 リッチはそう言うと、立ち上がって僕を見た。

「うん」

 少し寂しい気分になったけど、僕はリッチの後に続いて、街へ向かった。

 ◆

 僕が今日、ブルータルシティに帰ることを知った街の人達が、ギルティタウンの入り口まで見送りに来てくれた。クリムゾンフォレストから、ハロウィンとメタリカも来てくれた。ボスは涙もろいから、見送りに来れる状態じゃないんだという。ボスが泣いたら、一体どうなるんだろう。5つの顔が同時に泣くのかな。

「ずっと、ここにいてもいいんだよ坊や」

 看護婦のアンジェラが、少し悲しそうな顔で言った。

「……ケガをしたら、いつでも来て……」

 ドクターカーカスは、小さな声で僕の肩をポンと叩いた。

「私の加護がありますよ。ええ、神よりも」

 アンチクリストのジューダスが、僕に祈りを捧げてくれた。

「僕ジューダスからもらったこのスケッチブック 一生大切にするよ」

 肉屋のラウドがおずおずとやってきて、あの美味しいフライドチキンを一袋僕にくれた。

「いい画家になれよ」

 そう一言うと、僕に軽く拳を喰らわせてきた。

「チビ、おまえにいいもんやるよ」

 イングウェイが、いつも人差し指にしているごつい指輪を僕にくれた。

「これは、オレがガキの頃ブルータルシティのスラムで拾った指輪だ。そいつに願をかけると、なんでも願いが叶うんだ。オレはそのお陰で夢が叶った」

 イングウェイがデタラメを言った。

 指輪のお陰じゃなくて 、イングウェイが頑張ったから夢をつかめたことを僕は知ってる。

「ありがとうイングウェイ」

 その指輪は、僕の人差し指じゃなく、親指にぴったりなサイズだった。

「これ、みんなに……」

 教会の屋根で描いていた風景画をイングウェイに手渡した。さっき、この街の住人すべての顔を風景画に書き足した。僕は離れていても、みんなの顔が描けるようになった。

「うまく描けてんじゃねえか」

 イングウェイがあの歪んだ笑顔で言った。

「そろそろ行こうかアッサム」

 隣に立ったリッチが僕に言った。僕はありがとうと言って、街のみんなに手を振る。

 保安官事務所の地下に続く回廊を歩いている時、後ろからイングウェイの過激な歌が聞こえてきた。

To the town of the welcome sinner
ようこそ罪人の街へ

The town which anything of this place is familiarized with
ここは何にでもなれる街

Yes ! In anything if the front hopes, too
そうさ お前が望めば何にでも

  T

  " Welcome, welcome, killing !! "
「ようこそ、ようこそ、殺しちまうぞ」

By the entrance The Brutal sheriff laughs.
入り口で 残酷な保安官が笑う

It notifies of the work of the sheriff in the town.
やつの仕事は街案内

" By the way, by the way, let's turn from where "
「さて、さて、どこから回りましょう」

Tail behind him.
こいつのあとをついて行け


The steel arch Neon in the moon It will be a fairly utilized town.
鋼のアーチ 月のネオン なかなかいかした街だろう

If entering a town which returns for your sin to begin to fall
街に入れば おまえの罪は 重いも軽いも帳消しさ

It doesn't need a jail shop and handcuffs.
手枷も牢屋も必要ない

It will give the work to like. It is good when living selfishly.
好きな仕事を与えてやろう 勝手に生活するといい

The town which anything of this place is familiarized with
ここは何にでもなれる街

Yes ! In anything if the front hopes, too
そうさ お前が望めば何にでも

  U

he boss in this town is monster.
この街のボスは怪物さ

The buying to know a rule in the town?
街のルールを知ってるかい?

The number of the rules is about five.
ルールの数は5つほど

The boss doesn't permit if tearing.
破ればボスが黙っちゃいない


※Chorus part


One! It isn't lazy in the work.
1つ 仕事をさぼらない
he slug By the red forest It is made the pigment of the trees and it is .
怠け者は 赤い森で 木々の色素にされちまう!


Two! The killing is a taboo.
2つ 殺しは御法度だ
Killing Mr torture man bullies a life in front!
殺しちまったら 拷問室で 地獄の時間が待ってるぜ!


Three! It is which tells a lie rashly.
3つ むやみに嘘つくな
The wolf boy The tongue is pulled out by the sky bird and can not chatter.
狼少年 極楽鳥に 舌引っこ抜かれてくちなしだ!


Four! The child go to bed early.
4つ 子供は早く寝ろ
Don't do all of the Anything My Mama Don't Like!
やっちゃならねえのは ママを困らせる事すべて!


Five! It thinks that the last rule is what?
5つ 最後のルールは何だと思う?
Five Because it is a rule in front.It is decision at it.
5つめは お前のルールだ 自分で決めな!


Yes ! The town which anything of this place is familiarized with
そうさ ここは何にでもなれる街

  V

The face of the town person writes to have learned.
街人の顔は覚えたかい

The name of the boss writes to have learned.
ボスの名前は覚えたかい


The metal hero and the struggling house
メタルヒーロー 格闘家

It is the doctor and gangster group to the actress.
女優に ヤミ医者 ギャング団

The town of the sin of the set of the habit, too Making a friend and pleasan
くせもの揃いの罪の街 友達作って楽しくやりな


The town which anything of this place is familiarized with
ここは何にでもなれる街

Yes ! In anything if the front hopes, too
そうさ お前が望めば何にでも

Yes ! In anything if the front hopes, too!
そうさ お前が望めば何にでも!

 僕の目に涙が滲んできて、ふとスケッチブックの背表紙に視線を落とした。そこには、イングウェイの文字で詩が書いてある。『HELL/HOUND』の激しい曲調で、イングウェイが歌っている歌詞。普段のイングウェイなら絶対書かない平和なそれは、あのねじれた街をまるごと表したものだった。

 このびっくりするほど激しくて優しい歌は、乱暴者だけど、本当はどこまでも優しい、イングウェイそのものだと思った。最後の行を読んだとき、僕の視界が涙でぐにゃぐにゃに滲んだ。

―――Yes ! In anything if the front hopes, too! Dear a future painter 
     そうさお前が望めば何にでも。親愛なる未来の画家へ。

 我慢していた涙が、一気に溢れてきた。皆からもらった物が、こぼれた涙で濡れた。

 僕はこの街で過ごした一週間と、皆からもらった優しさを一生忘れない。

「さあ、帰ろうブルータルシティに」

 リッチがそう言って、僕の背中を押した。


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