ギルティタウン 

第二話 ブルータルシティの月

罫線

「あいつは音楽の天才だったが、狂人だ」

 強面で巨漢の店長が有線で流れる『ゴア・コーポ407号室の好色ババア』を聴きながら呟く。

 イングウェイは半年前、バンドのメンバーを一人残らず殺した。動機は不明。イングウェイは死刑になった。

「この街の人間は結局、どこに行ってもダメなんだな」

 店長が溜息をついた。

「でも、僕のヒーローはイングウェイだ。僕はイングウェイみたいになりたいよ」

 店長は呆れたように鼻を鳴らし、棚卸しに作業に戻る。『HELL/HOUND』はメンバーが全員死んで解散した。

 残された楽曲の質の高さ、異色の終止符と曖昧って解散後もカルト的な人気を誇っている。

「おいボーズ、今月の給料だ」

 帰り際、店長に今月の給金を渡される。スケッチブックを三冊買ったらなくなる額だった。帰り道、僕は駆け足でブーツを鳴らしながら、つぶれかけの画材屋に寄った。スケッチブック1冊とクロッキーを一本買う。僕は絵を描くのが好きだ。

 大人になったら『HELL/HOUND』のCDジャケットをデザインする人になりたかった。『HELL/HOUND』のブックレットには、イングウェイの描いた殺人ウサギ・バーニーがいる。僕はそれをカバだと思っていたので、代わりに描いてあげようと思ったんだ。その夢はメンバーの死と一緒になくなってしまった。裏通りを歩きながら、足下に転がっていた小石を蹴飛ばす。

「いてえなチビ!!」

 小石は前方を歩いていたパンクスの後頭部に直撃した。

「パンクスなら、小石くらいよけてみせろよ!」

 謝っておけばいいものを、僕は思わず憎まれ口を叩いてしまった。

「なんだとコラ!!金出せオラ!!」

 なんのひねりもない言葉を吐き出す男に、僕は数発殴られ、頭を踏んづけられた。
 ちくしょう、度胸も腕力もないくせに、なんで僕はあんな事言っちゃったんだ。

「舐めた口利きやがって。こいつ売って金にするか」

 パンクスがスケッチブックとクロッキーを、僕から剥ぎ取って言った。

「かえせよ!」

 発殴られ、頭を踏んづけられた。
 ちくしょう、度胸も腕力もないくせに、なんで僕はあんな事言っちゃったんだ。

「舐めた口利きやがって。こいつ売って金にするか」

 パンクスがスケッチブックとクロッキーを、僕から剥ぎ取って言った。

「かえせよ!」

 僕は頭を踏まれながら取り返そうとした。
そいつは僕の無様な姿を鼻で笑うと、スケッチブックを破いて僕の頭に浴びせてくる。

「ほらよ。返したぜ」

 パンクスは皮肉たっぷりに言うと、裏路地の奥に姿を消した。

「……」

 僕の周りに、スケッチブックだった紙くずが散乱している。

割れたクロッキーを拾うと妙にやるせない気分になり、家までがむしゃらに走った。

 腐食したコンクリートに映り込む、街頭が照らし出す僕の影は、巨人みたいに大きかった。

 早く大人になりたい。

 この影みたいに大きかったら、さっきのパンクスだってぶちのめしてやれたんだ。
 この汚染された街からも出て自由に生きるんだ、憧れのイングウェイみたいに。
 僕は考えても仕方ない事を頭に巡らせながら走っていた。

 考えれば考えるほど、僕は行動も頭の中もどうしようもなく子供だと実感して、余計に空しくなってしまう。青白い月が、ブルータルシティの不気味な夜景を静かに照らしている。

 月まで街の毒素にあてられて、青ざめてるみたいだ。


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