蒼釼のドラグーン

スターダスト・デュオ
二次創作小説 作者 : AS様【 WEBサイト

罫線

「……待ったか」
「ううん、今きたばかり」

 完全にデート。主に台詞が。
 二人は待ち合わせのカップルのようなやり取りを交わす。

 頭を抱えるブロス。
 そんなブロスをジト目でみつめるメイル。

 目の前に広がるは巨大な古代文明。
 古き時代の残滓であり、強力なガーディアンがひしめく星の遺跡だ。

 目的はスペリオルラグーンの強化パーツ。
 時刻は深夜。場所は護龍星の遺跡。満点の星の元、おじさんと少女は、若干命がけのデートを開始した。



 コツコツコツ、
 タンタンタン。
 静まりかえった遺跡に響く足音二つ。

 一つの足音は重い。
 もう一つの足音は軽かった。

「……嬉しいのかね、メイル?」
「……?」

 ブロスは少女に向かって話しかけた。

「……なにが……ですか?」

 メイルは振り向き、ブロスの目を見る。

「いや……なにがといってもな……君の様子の事をいっているのだが」
「はぁ……そう見えましたか」

「整理しよう。今我々がいるところは、ライドギアの強化に繋がるパーツが眠っている古代の残滓。つまりは……」
「星の遺跡です」
「そう、それだ。だがこの星の遺跡どういう所か、君はわかっているのかね……」
「高エネルギーのパーツの存在多数。同時に強力なガーディアンの存在多数。まぁ危ない所ですね」
「ではそんな危険な場所に我々がきた目的は?」
「星の遺跡に眠るパーツを取得。それによりライドギアの戦力強化を図るためです」
「宜しい。認識に誤りはないようだ」

 そこでブロスははぁと重い息を吐く。吐いた息は白い。今は夜。気温が低くなっているのがわかる。
 機械仕掛けの体をの持つブロスはある程度の気温にも耐えられるが、メイルはそうではないはずだ。
 正直、この寒さと薄暗さにメイルが気後れするものだとブロスは思っていた、だが……。

「今の君はやけに嬉しそうに見える。知っていると思うが、星の遺跡はガーディアンの魔物が すみついている。浮ついた気持ちでいるとこの先命の保証はできんぞ」
「危険なのはいつもの事ですよブロスさん」
「そうかもしれんが……それにしたってな……」

 今自分達が歩いている遺跡は、奥にいけば強力な魔物がひしめいている。
 本当ならブロスはメイルを連れてくるつもりはなかったのだ。
 しかし、ブロスが夜こっそり抜けだし遺跡に向かうと、ブロスを待つように 遺跡の入り口にメイルが座っていたのだ。

「ふぅ……」

 ブロスは険のにじむ視線でメイルを見る。ジト目でこちらを見つめるメイルの内面を 見通す事はできない。

「とにかく、私の横ではなく後ろを歩くんだ。魔物がきた時に守り切れん」
「いやです」

 メイルが拒否った。

「それでは、デートらしくないじゃないですか?」
「デート!?」

 ブロスは素っ頓狂な声をあげた。メイルは真顔で堂々とこの遺跡巡りをデートといってのけたのだ。
 硬直する事数十秒。メイルとブロスはみつめあう。

(いかん……)

 なにやら未知の感情がブロスのかまくびをもたげてきた気がした。

「メイルと二人きりでドキドキしてきた、とブロスは思ったのでした」
「勝手に人の心情をナレーションするんじゃない!」
「……冗談です」

 ポソっとメイルが横をむく。

「ただ、ブロスさんと夜二人出歩く機会ってあまりないので」
「そんな事はない。二人でスペリオルラグーンを作った時はあるだろう」
「私は『夜二人』でといいました。特に今夜は――」

 そこでメイルは遺跡に射す月光に目をやる。そしてゆっくりと視線を天空に向けた。
 ところどころ裂けた遺跡の天井、その割れ目から見える星の海へと。

「今夜は星がでていますので」
「……あぁ……星か」

「いつもブロスさん、私が一緒に星を見に行こうといってもついてきてくれなかったのです。 こういう機会は珍しいかと」
「まぁ、な……」

 ブロスは複雑な表情を見せた。自分が星を忌避する理由の根は深い。
 それをメイルに説明する気にはなれなかった。

「では先に進みましょう」
そういってメイルはブロスの手をとった。
「なぜ手を握るのだ、メイルよ」

「ブロスさんが守ってくれるようですので」
「しかしだな……」

 そういいかけた時、ブロスはメイルの手の感触を感じた。
 暖かい感触。しかしかすかに緊張に震えているような感触があった。

「……魔物が出たら後方にいくのだぞ」
「……はい」

 二人は歩いていく。親子のような影が並び、遺跡の奥へと消えていく。
 その様子を天の星々は静かに見据えていた。



「来たな……」

 ブロスは立ち止まる。メイルは黙ってブロスの視線の先をおった。
 伝わる力の気配。蠢くガーディアンだ。

「フンッ」

 ブロスはガーディアンを迎え撃つべく構えをとった。

「gyyyyyy!」

 襲い来るガーディアン。ブロスはその攻撃を最小限の動作でかわし抜く。

「ハァ!」

 振り抜かれる拳の一撃がガーディアンのこめかみを正確に捉えた。
 絶叫をあげ、ガーディアンが倒れる。

「ブロスさん、上!!」

 落ちてきた蜘蛛のような魔物にもブロスは動じない。
 口を開けた魔物にも躊躇なくブロスは手を突き出した。
 鈍い音と共に魔物の口内をうち据える。
 しかし魔物はなおもブロスを食い破らんと喰らいつく。
 鋭角の牙がブロスの腕をおおう。しかし彼の鉄面皮は崩れない。

「すまんな、美味くないだろうなにせ」

 ゴキン、と響く破砕音、魔物の牙が粉々に砕けちった。

「私の腕は機械製だからな!!」

 ブロスは砕けた歯をつかむと同時に、おもむろに魔物を振り回す。
 そのまま力任せにスイング。他の魔物に向かって思いっきり投擲した。
 魔物が轟音をたてて叩きつけられる。うち据えられた魔物も大きくのけぞった。
 まさしく人外の技だ。尋常な硬度、尋常な膂力ではない。
 それは機械仕掛けの体をもつブロスにならではの戦いだ。

「荒々しい戦いっぷりですねブロスさん。どこかの部族としてもやってけそうです」
「フン、荒い戦いは好まん。私はむしろ――」

 そしてとりださしたのは鋼の糸。

「こういうやりかたの方がこのましい」

 力を帯び、きらめく鋼の魔編の糸。
 ブロスは指揮者の如くそれを掲げた。

「――ロンド」

 ブロスが武器を展開する。同時に襲いくる遺跡のガーディアン達。

「フンッ」

 ブロスの技巧がガーディアンの速度に勝った。
 迅速に展開された糸の檻が突っ込んできたガーディアンをズタズタにする。

「展開せよ」

 後方から群がるモンスターにも一切気後れしない。
 ブロスは行動を先読みする。
 張られた陣に魔物がかかった。
 ブロスは行動を誘導する。
 張られた陣が魔物で埋め尽くされる。
 ブロスは魔物の動きを完全に制御していた。
 優雅にして迅速。踊るように陣をはり魔物を轢殺する姿はさながら戦場の指揮者そのものだった。
 時間を経るごとに地には幾つもの魔物がその屍を積み上げていく。

「機動鋼刃流――鉄霧雨!!」

 演奏の終わりを告げるようにブロスの腕が煌めく。
 光り力を帯びる鋼の糸。
 数多の魔物達が切断されていった。
 そして、完全にガーディアン達は沈黙する。

「ブロスさんのやり方はなんかこう……えげつないですね。 文学的にいうとぎょりごりぶちゃーーーって感じです」
「うむ、よくわからんがほめてないのはわかったぞ」
「でも感謝はしているのですよ?」

 そういってメイルはブロスと目を合わせた後、頭を直角に下げた。
 凄い速度で頭を下げるメイル。

「これくらいマッハで頭を下げる位感謝してます」
「……フン、先を急ぐぞ」
「ブロスは照れた。いまの仕草可愛いなメイルと彼は心の劣情を――」
「メイル!私はそんな事考えておらんぞ!!勝手に人の心情をナレーションするんじゃない!!!」
「まぁまぁブロスさん」

 なにがまぁまぁなのかわからない。
 ブロスは嘆息し、遺跡の奥へと足を向ける。メイルがピタリとそれに寄りそう。
 その後も幾多もの魔物が襲いかかるがブロス達はそれらを掻い潜っていく。
 何度も魔物達との戦闘を繰り返し、ブロスは遺跡の最奥に近づいていった。



「……かなり消耗したな」

 中枢の広場のように出たところで、ブロスは荒い息を吐いた。
 度かさなる魔物との戦いをくぐりぬけたブロスだったが、遺跡最奥に近づいた時点で消耗を自覚した。

「はぁーーーー!!」

 メイルがブロスの背中を叩いた。

「なにをするメイル!!」

 唐突なメイルの行動にブロスは軽く憤慨する。

「元気を注入です」

 鼻息を荒くしてなぜかメイルは大きな胸を張った。

「まったく元気にならんな」
「まぁそうでしょうね……」

 じゃあやるなよと思うブロスをよそにメイルはリュックを下ろした。

「そういうと思って……」

 メイルはゴソゴソとリュックをあさりだす。
 背が小さいからか、その姿はホビット商人のようで少し微笑ましく映る。かのホビット商人はゴソゴソと何かを引き上げた。

「お弁当をもってきました」
「弁当だと?」

 メイルは驚くブロスをよそに、箱のようなものをとりだした。
 よいしょという声と共に箱があくとそこには、ボリュームたっぷりのご飯やおかずがあった。
 その中で特に目をひいたのが。

「これは……大きな魚だな」
「私が朝海で釣った魚です。凄く、大きいです」
「一度、君の趣味嗜好についてじっくり問い詰める必要がありそうだな」
「まぁそれはいいとして」

 メイルはすとんと、広場にこしかける。そしてとなりの芝生をパンパンと叩いた。

「…………」

 座れという事だろう。メイルとのコミュニケーションの取り方を最近ブロスはわかってきた。
 ブロスは黙ってメイルの横に座る。腰をおろすと、メイルの弁当の匂いが香ってきた。
 いや、臭いというべきか。

「うむ、生臭い」
「ブロスさん、あーんしてください」

 ブロスの感想をスルーしてメイルは魚を箸ではさむ。

「あーん、だと?」
「はい口を開けて、あーーん」

 これは逃げられん流れだな、とブロスは今日何度めかの諦めの悟りを開いた。
 だが――。

「お断りする」

 無駄にでっかい魚から香る生臭さは百歩ゆずってまだいいとしよう。だがそれ以上に ブロスにはメイル相手にあーんする行為に照れがあった。

「ギシアンのほうがいいですか?」
「お、お断りする!!」

 ブロスは少しどもった。

「冗談はおいといて、まぁ食べてみてください……私が一本釣りした魚です。おいしいですよ」
「別に味を心配してるわけではない」
「じゃあなぜ駄目なのですか」

 そこでメイルは小首をかしげる。無機質でありながら真っ直ぐな瞳でブロスを見ている。

「……わかった」

 まぁ死にはしないだろう。ブロスはあきらめの境地で顎に力を入れた。

「あーーーん」

 そう言ってメイルがでっかい魚をブロスにさしむけた。

「……あ、あーーん」

 激しい葛藤のすえ、ブロスは口を開けた。そしてメイルがでっかい魚を差し出してくる。
 そこでメイルは魚を――魚を自分の口に運んだ。

「ふおおおぉぉ」

 ブロスは素っ頓狂な声をあげた。
 バリバリバリと聞こえる咀嚼音。無表情でメイルはでっかい魚をバリバリとかみ砕きった。

「……何故だねメイルよ?」

 ブロスの一大決心によるあーーーーんは不発に終わった。なんだこのロリは。 悪魔か!小悪魔なのか!?男を翻弄する夜の蝶的ななにかなのか?

「この魚、生臭かったので……ブロスさんに食べさせるわけにはいきません」

 じゃあ最初から出すなよ、とブロスは思った。

「……まだ魚はあるようだな」

 メイルの弁当箱にはまだ魚があった。今少し跳ねた気がするが、気のせいだと思う事にする。
 濁った瞳でブロスを見つめているように見えるがそれもきっと気のせいだ。

「どうぞ」

 むき出しの生魚をずいっとメイルはさしだした。

「……少し待っていなさい」

 そういうとブロスは携帯ナイフをとりだし、魚をさばいていく。

「芸達者ですね、ブロスさん」
「一人やもめなのでな」

 ブロスは魚をさばいていく。そして、できあがったのは。

「魚が……」
「あぁ、これはおさし」
「これは……八つ裂きの技術に優れていますね」
「刺身だ」

 もう慣れたぞ、とメイルの言動に鉄面皮を保つブロス。


「このタンポポはブロスさんがのせたのですか?」
「いいから食べろ」

 ブロスの応えに首肯した後、メイルは刺身の横にある黒い液体に目をやった。

「これはなんです?」
「しょうゆだ」

 そこでメイルは黙って醤油を手にとり醤油を刺身にかけ……かけ……かけない!!!

「ファッ!?」

 ブロスは驚きの声をあげる。なんとメイルはグビリと醤油を一気飲みした。

「いけますね」

 いけねぇよ、と心で突っ込むブロス。

「こうですか」

 そういって、醤油の差し込み口にハシと刺身を突っ込んだ。
 流れるように醤油を一気のみした後、ハシと刺身を醤油に突っ込むコンボに戦慄を禁じ得ないブロス。

「メイルは……宇宙だな(頭が)」
「はい、宇宙から来た子供です」
「あぁ、改めてよくわかったよ。ありがとう」
「ではブロスさんどうぞ」

 そういってメイルは刺身とハシが突っ込まれた醤油をブロスにさしだした。

「間接キスです」

 何の感情も宿っていない。

「こんなに嬉しくない間接キスは希だぞ」

 シュールすぎる。
 えっ呑むのこれ、マジに?とブロスがナウばヤングだったらそういうに違いない状況。

「間接キスです」

 大事な事らしい。二回言った。とうに諦めの境地に達していたブロスは刺身をはずし、醤油を手に取り、少し口をつける。黒い液体が口に流れた。口に広がる醤油の味。
 うむ、無理だなこれは、とブロスは醤油から口を離した。

「今ブロスさん私と間接キスするためだけに、ボトルに口をつけましたね」
「醤油が飲めないだけだ!!」

 少しくらいなら付き合いでのんでやってもいいとも思ったが、やはり醤油は飲むものではない……当たり前だが……。

「では刺身をどうぞ」

 メイルは醤油に突っ込まれていた刺身をさしだした。ブロスは黙ってそれを手に取る。

「すごく……塩辛いな」

 醤油づけだったから当たり前だった。
 だがなんとか新鮮だという事はわかる。

「だが魚は新鮮だな」
「朝一本釣りしてきましたので。この為に訓練を重ねた甲斐あって頑張って一本釣りした次第です」

 メイルは年齢にしては、かなり発達した胸を張った。
 頑張るベクトルが狂っとる。

「では口直しに――」

 ゴソゴソとメイルはもう一つの箱から、なにかをとりだした。

「こちらをどうぞ……」
「これは……もしやケーキか」
「はい、あーんしてくださいブロスさん」
「もうその手には乗らんぞ」

 ブロスはそっぽを向いた。

「今度は私の大好きなケーキです」
「しかし、また君が食べるという展開が待っているのだろう。大好きなものなら尚更だ」
「いえ」

 そこでメイルはブロスを真っ直ぐにみつめた

「私が大好きなものだから、ブロスさんに食べてもらいたいんです」
「……ふん」
「あーんしてください、ブロスさん」
「……あと一回だけだ」

 そう言ってブロスはゆっくり口を開けた。
 メイルが丁寧に、ケーキをブロスの口に運ぶ。
 今度は真っ直ぐに、ブロスの口に入ってきた。
 口に広がる甘い感触。

「これは……うまいな」

 素直な感想をブロスは口にした。

「嬉しいです」

 相変わらず言葉には無機質だったが、どこか熱を感じさせる響きをブロスは感じる。
 メイルが照れているように見えたからかもしれない。

「じゃあ次はメイルを食べようとブロスは決意する。彼は劣情にゆりうごかされるままメイルを覆う服という性のメイルを外そうと――」
「だから勝手に人の心をナレーションするんじゃない!!しかも物凄くねつ造だぞ!!!」

 そんなこんなでブロスとメイルの遺跡の休憩時間は過ぎていくのであった。



「フゥ……」

 遺跡最奥の扉にブロス達は立っていた。
 休憩から数時間後、ブロスは力を回復させていた。
 休憩の甲斐はあった。体力が回復している。腕に力が入る。自分の体を確認する。
 いける、ブロスの肉体は満ち足りた万全の状態にあった。

「時に幼女と手をつなぎ満ち足りているブロスさん。体調は万全でしょうか?」
「変な意味に聞こえる言い方禁止だ!むしろ体力が回復してるだけだ」

 そんな軽いやり取り。
 しかし、互いの表情はどこか硬い。
 今彼らがいるのは遺跡の最奥。
 奥に鎮座する巨大な気配を彼等は感じ取っていた。

「……いるな」
「……いますね」

 ここに最も強力なガーディアンがいる。
 ここまで進んできて、ブロス達は目的のパーツを見つける事はできなかった。
 ならば目的のものはこの先にあるだろう。同時に最も大きな障害がある事も。
 二人は手をかけ扉を開く。開かれていく扉、広がっていく最奥の風景。
 遺跡の最新部にブロスとメイルは足を踏み入れた。

「これは……」

 扉を開けると、そこに広がる部屋。
 その奥に鎮座しているのは巨大な機械兵器だった。

「!?あれはまさか……」
「エンシェント・ゴーレム!!」

 機械兵器のモノアイに薄ら紅の光がともる。
 それだけで怖気がはしり胸がざわつく。
 エンシェント・ゴーレム。
 それは伝説に聞く古代の機械兵器。ライドギアとは異なる設計思想で作られた力の象徴だ。

「ブロスさん!?」

 メイルから驚愕の吐息が漏れる。エンシェントゴーレムが動き出したのだ。
 瞬間――空間に吹き上げる魔力の波濤。
 広がる圧倒的な力の波動に、二人は吹き飛ばされそうになる。
 それはまさしく古代の暴威だった。

「下がっていろメイル!!」

 エンシェントゴーレムが揺らぐ――攻撃動作だ。危機を察したブロスがメイルを庇うべく前に飛び出した
 瞬間、空間が――爆ぜた。

「きゃああああっ」

 ブロスの腕の中でメイルが悲鳴をもらす。
 起動したゴーレムが魔力を開放。
 メイルが一秒前にいた空間はズタズタに破壊された。

「インフェルノ!!」

 ブロスは叫びライドギアを呼び出す。
 現れたのは鋭角のフォルムをもつ、鋼の巨人。

「ブロスさん!!」
「全力でいかせてもらうぞ、機械兵」

 インフェルノの槍が現出する。

「はああぁぁぁ」

 雄叫びと共にブロスが槍を投擲。
 巨大な槍がエンシェントゴーレムをとらえる。
 激しい火花を散らしゴーレムが揺らぐ。が、しかし。

「なに……」

 ゴーレムは一撃にも構わず接近。反撃の拳を振り上げた。
 降り下ろされる鉄の大質量。その重撃をブロスは間一髪で交わす。

「ちぃっ!」

 掠めただけで、インフェルノの体が大きく揺らいだ。凄まじい威力だ。

「ロンド!」

 相手の戦力にブロスは自分の得意武器を呼び出す。
 このゴーレム相手に油断の類いは死に繋がる。

「gaaa」

 地鳴りと共にゴーレムがすかさず突撃を開始した。

「展開せよ!」

 ブロスは迅速に糸の陣をはりめぐらせる。

「機道鋼刃流――荒覇吐」

 瞬間、インフェルノの鋼糸がうなり超高速で展開していく。
 大胆かつ精妙。高速で綿密に編み上げるその手腕たるや並のものではない。
 ブロスは瞬く間にゴーレムの進撃を阻むべく鋼のカーテンをはりめぐらせる。

「gggg」

 進撃するゴーレムに鋼糸が絡みつく。

(――かかった)

 糸はゴーレムの全身にその身体を裁断する――はずだった。しかし――。

「なにっ――」

 驚愕がもれる。ゴーレムはブチブチと音をたて鋼糸を引きちぎる。
 ゴーレムの強度と腕力がブロスの鋼糸強度を上回ったのだ。

「くっ!」

 鋼糸を破られた驚愕にブロスの動きが鈍る。そしてそれは決定的な隙となる。
 ゴーレムがインフェルノに接近する。

「goooooo」
「なにぃッ」

 ゴーレムの重撃がインフェルノに直撃。破砕音をたててインフェルノが吹き飛ぶ。そしてゴーレムが再動。
 ブロスに止めをさすため、ゴーレムの胸部の魔力炉が光を帯びる。

「駄目!」

 メイルはとっさにライドギアの召喚に入る。
 魔力炉にひしめく力の波頭をメイルはいやがおうにも感じてしまう。
 今のブロスがあれにあたるのはまずい。

「きて、スペリオルラグーン!!」

 メイルの叫びがブロスを救う。
 メイルに呼び出されたスペリオルラグーンがインフェルノの前に立つ。

 ――ゴォ!

 スペリオルラグーンが防御結界を展開。
 そして、スペリオルラグーンはエンシェントゴーレムが放ったエネルギー波を受け止めた。

 「メイル!!」

 ブロスは叫び立ち上がる。メイルを攻めるゴーレムを一身に見据えた。全身から力を絞り出す。

 「う、オオオォォォ!!!」

 檄声と共に放たれた槍の一閃。
 ブロスがエンシェントゴーレムに向かって竜騎士の槍を投擲。
 槍を受けたエンシェントゴーレムが大きく震えた。
 メイルへの攻撃が中断され、ゴーレムの巨体が数十メートル後方へ吹き飛ぶ。

「メイル、メイル!!」

 ブロスはエンシェントゴーレムの攻撃を受けたスペリオルラグーンにかけよる。

「……大丈夫? ブロスさん」
「馬鹿者それは、こっちの台詞だ。無茶をするな」
「……シールドを展開すれば耐えられると思ったので」
「それでも駄目なものは駄目だ」

 ブロスの声は知らず震えていた。そしてメイルへの再攻撃がないか、注意深くゴーレムを監視する。

「……すごいですねブロスさん。あんな威力、初めてかも」
「……ふん」

 メイルが危機だったからな、という言葉を飲み込んでブロスはエンシェントゴーレムを見据える。
 渾身の一撃はゴーレムを大きく揺らがせたが打倒には至らない。いまこの時も、ゴーレムは その巨体をゆっくりと起こしつつあった。

「だが、今の攻撃で倒しきれないとなると……」

 かなり攻略は難しい。手元の痺れを押し殺しブロスは呟く。その時、メイルが重い口を開いた。

「……二人なら……」

 メイルのダメージに震える声。だがその声には芯が通っていた。
 メイルは傷ついた体をゆり動かし、ゴーレムに視線をあわせる。

「二人なら……倒せます」

 同時に解放されるスペリオルラグーンのコード。

「合体コード――解放」

 起動する鍛鉄の力。スペリオルラグーンの周りを鍛鉄の法陣が廻る。

「この力は……まさか」

 合体技。
 二つのライドギアの力を合わせ何倍もの力を生み出す秘技中の秘技。

「合体技か。確かにそれならあのエンシェントゴーレムを倒すのも可能だろう。だが君と私で出来るか」
「やるんです!……大丈夫です。私、ブロスさんとならやれます!!」

 静かながらもその口調は確信に満ちている。怪我も消耗も浅くはない。
 メイルの小さな体はそれでも折れる事なくブロスに信頼を寄せている。
 睥睨するようにこちらを見据えていたゴーレムが――動いた。

「Gooooooo」

 震え響きわたる機械仕掛けの大音声。
 巨大なエンシェントゴーレムが進撃を開始する。

「……ッ」

 もはや退路はない。ならばやる事は一つ。

「往くぞメイル!! 私と合体しろ」

 不退転の決意でブロスはメイルに檄を飛ばす。

「ガッテンです、ブロスさん」

 その言い方は彼女なりの個性だろう。彼女の個性に振り回されたブロスだがその心持ちが今は頼もしい。

「吠えろインフェルノ」

 メイルが展開した魔法陣にブロスは全霊の魔力を注ぎ込んだ。明滅する鍛鉄の陣。
 流れ込んだ負荷にメイルが膝をおった。

「くっアアァァ」

 メイルから漏れる負荷の苦鳴。

「大丈夫か、メイル」
「大丈夫、いけます。ブロスさんはそのままで」
「ッ!!わかった!!」

 ブロスはメイルの魔法陣に魔力を注ぎ込む。

「ッ!?きた!」

 それは完成の感触。

「デュオの時間だ、メイル」
「はい、ブロスさん」

 その力は決意と共に。二人の力が混ざりあう。そして――鍛鉄の陣に創造される新エネルギー。

「深淵開放――噴き荒れろインフェルノ」
「光輝創造――応えてスペリオルラグーン」

 二人の声が響く時――新たな力は迸る黒の黄金光となる。
 それは心を一つにし、体を同一にして放つ合体必殺。

「「吠えろ黒銀――合技エレクトリックバースト!!」」

 二つの戦零がおりなす合体必殺。
 吠えたける光と闇のロンドがエンシェントゴーレムに殺到する。

「gyaaaaaaa」

 エンシェントゴーレムを襲う黒き黄金光。その威力たるや並のものではない。
 光は直撃を受けた古代の巨人を突き破る。巨人を突き破った光は遺跡の天井をも巻き込み膨れ上がり破壊していく。
 天に広がる満天の星の元、ここに雌雄は決した。

「goooooooo!」

 響く機械巨人の断末魔。
 古代の叡智は、最新鋭の絆と技術の前に破れさる。
 エンシェントゴーレムが砕け倒れて飛散した。

 後に残ったのは、黄金と闇の余波を発するライドギア二つ。
 圧倒的な力の波濤にブロスは身を震わせる。

「合体技、エレクトリックバースト……凄まじい力だな」
「これが合体「ラブロス下半身バーストwith メイルの威力です」」
「メイル!!変な名前をつけるのはやめたまえ!!羞恥プレイだ!!!」
「すいません、私のダサいネーミングセンスではお気を害するかと思いまして」
「…………」

 もしかして昔、スペリオルラグーンという名前をダサいといった件だろうか。
 メイルの根にもちっぷりに少し背筋を寒くするブロス。

「ところで私で下半身をバーストさせてるブロスさん、どうでしたか。私との合体は?」
「なにやら激しく語弊がある気がするぞ!!だがまぁ……凄かったな」
「私の具合ですか?」
「シャラップ! 違う!!!威力だ威力!!!」

 ブロスとメイルの合体技――エレクトリックバースト。
 その圧倒的な破壊の波動は古の巨人を完膚なきまでに破壊せしめた。
 そして――

「あれは…………」

 メイルが弾かれたように、巨人の残骸の上を指した。
 巨人の破壊された体が燐光となって消えさる中、大きなパーツが浮き上がったのだ。

「あの力の波動。まさか…………」

 パーツから出る力の余波にブロスは理解する。
 エンシェントゴーレムの力はいくらなんでも強力に過ぎた。
 インフェルノとスペリオルラグーン両方の力が必要な敵などそうあるものではない。
 だが敵の力の源泉が強化パーツによるものだとすれば合点がいく。

「あれが……強化パーツ!」

 メイルは駆け出し、光のパーツに近づいている。
 光のパーツに、手を伸ばし掴もうとする。
 そしてメイルがパーツに手を触れたその瞬間――

「あっ…………」

 メイルが光に触れた時崩れゆく感触。
 メイルの腕にとけるように、強化パーツは霧散しつゆのように消え去った。



 遺跡の帰り道。
 ブロスとメイルはゆっくりと来た道を引き返していた。

「結局、強化パーツは手に入りませんでしたね」
「あぁ、あの強化パーツがどんな力を帯びていたかわからんが……なくなってしまったものは仕方がない」

 そこでブロスは月を見上げる。
 煌々と光る月。時は二時も過ぎてるだろう。更け明けゆく宵闇に二人の足音が響き、二つの影が伸びている。

「すまなかったな。ここまで来て収穫を得られなかったとは」

 ブロスはメイルに詫びた。

「いえ収穫はありました」

 メイルはその詫びを拒否した。

「収穫?そんなものどこに」
「ここです」

 そういってメイルは自分の胸に手を当てた。

「ブロスさんとの思い出です」

 ゆっくりとメイルはブロスと目を合わせていった。

「……そんなもの何の足しにもならんな」
「足しがなければ駄目ですか?」
「なにっ――」
「なにもないのは……ブロスさんは嫌いでしょうか」
「…………」

 ブロスは黙ってメイルの言葉を聞く。
 確かにこの遺跡探索で強化パーツを手に入れる事はできなかった。
 無意味で徒労といえるだろう。

「いや……」

 ブロスは月を見上げる。そして、メイルに視線を合わせた。
 ――なにもないのは……ブロスさんは嫌いでしょうか。
 メイルの言葉には芯に響くものがあった。
 星の光に照らされたメイルの姿はどこかいつもと違って見える。
 メイルの普段見えない部分が見えた気がした。

「発見はあった……」
「なんでしょうか?」
「久しぶりに思ったよ……」

 それはずっと忘れていた感情。

「星とは、綺麗なものだったのだな」

 そしてずっと忌々しいと思っていた星の海。しかし、今この時だけははその星もそう悪くはないと思った。
 星の遺跡では短いながらも色々あった。
 メイルといたこの夜は、忌々しい記憶が薄れた気がしたのだ。

「ブロスさん……」
「かえるぞメイル」
「感動しました、合体しましょう。下半身バーストブロスさん」
「だから語弊があるぞ!! ……だがまぁ……」

 そこでブロスはゆっくりと息を吐き、手を差し出した。

「……手だけならな」
「…………喜んで」

 差し出されたブロスの手を、メイルは手に取る。
 手を綱繋いで二人はゆっくりと歩き出す。
 月と星の光が遺跡に射している。
 遺跡を歩く二つの影はとけあうよう近くなる。

 そう、悪くない。
 どんな夜でも、嫌いな星空も。このメイルという少女といると悪くない。
 手の温もりを感じつつ、ブロスはそんな事を思うのであった。

 ◆ ◆ ◆
   END
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responsive screens夢幻劇場は獏が運営する個人創作サイトです。個人創作やご依頼戴いた作品の掲載を趣旨としております。当サイトの文章やイラストはすべて『獏』の創作物です。著作権は『獏』にあります。著作権者を偽る行為はお控えください。

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サイト名
 夢幻劇場 DREAM THEATER
サイトURL
 http://dream-theater.org/
管理人
 獏(ばく)

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