蒼釼のドラグーン

おじさんパンデモニウム
二次創作小説 作者 : AS様【 WEBサイト

罫線

「ピンポンパンポーン、メイルーーメイルはいませんか」

 ブロスはメイルを探していた。最近メイルはゴソゴソと部屋で何かをやっている。
 おそらくゲームみたいなものだろう。追及するべきか。

(いや、メイルの自由にさせてやろう……なにかいかがわしいゲームなどやっているはずもないのだから)

 そう考え、捜索用のピンポンパンポーンの音を止めた。

(今日は、お休みの日だ!!ゆっくりしろよ、メイル)

 今日はメイルの自由にさせてやることにした。
 その選択が――地獄の始まりだった。



「マッチョ――、おじさん?」

 メイルは部屋でおじさんと対峙していた。
 シュメール製のシュミレーターを改造した、実在人物が出てくる十八禁ゲーム。
「おじさんパラダイス」に出てきたおじさんのひとり――ドラゴだ。

「おじさん、何の用?」
「私なら君のゲーム、おじパラを強化してあげられる。そのゲームを伝説のゲームに――」
「おじさんパンデモニウムにね」
 
 ◆

 メイルと、ドラゴは遺跡に行っていた。
 遺跡は前にブロスといった所に似ているが別の遺跡だ。

「ここにある強化パーツなら、君のおじパラを進化させることができるんだ。さぁ探すぞ!メイルちゃん!!!」
「う、うん……」
「どうしたね。おじパラを進化させると、おもしろいぞ!一緒にプレイしたらブロスおじさんもきっと喜ぶ!これは君たちのためなんだよ。」
「う、うん。わかったよドラゴさん」

 メイルはドラゴが少し苦手だった。
 なにせ怖い。人体実験と称して色々なことをやっている。
 ここまでついてきた自分の判断は正しかったのだろうか。
 メイルはため息をついて歩き出した。

(メイルううううううーーーーーーーー)

 そんな二人を天から見下ろす影があった。
 ライドギア・インフェルノ。
 ブロス・ギブロスの愛機である。

(なぜあのドラゴと一緒にいるのだメイルよ!!)

 ブロスは悶々としていた。
 なにせ、メイルと一緒に遺跡にいくのはブロスの特権だと思っていたのだ。
 それなのに、それなのに。

 ――私以外のおじさんと一緒に遺跡に、だと!!

 その事実はブロスの心を打ちのめした。
 怒りに燃える鋼の瞳がドラゴを見下ろしている。

「メイルちゃん、強化パーツの反応があった。ドラゴおじさんは少しあちらを見てくるよ」
「わかったよ、ドラゴおじさん」

 そういって、ドラゴとメイルが離れた。
 マッチョな体をまちょまちょと、ドラゴは地下深くを進んでいく。

「――今だ!!」

 ブロスのインフェルノから殺気が迸る。
 ブースト全開、一気にインフェルノが加速した。

「ぬおおおおお!!」

 急転直下。インフェルノがドラゴに襲い掛かる。

「なにっ!?」

 突然の強襲にドラゴはめんくらった。
 しかし……

「くっ!? こおぉい、ムスタバル!!」

 さすがのマッチョである。恐るべき反応速度で
 ドラゴは自身の戦零機を召喚した。
 遺跡が震撼する。ドラゴの戦零機、ムスタバルがその異様を表したのだ。

「ぐぬううう、この圧力は……」

 ムスタバルから放たれる圧倒的な鬼気。
 吹きすさぶ大圧力。さながら力の極点。その力に空気が変質した。
 さすがのブロスも息を呑むほどだ。

「馬鹿め、どこのウマの骨か知らんがこのムスタバルに挑むとは。その愚かしさ、死をもって償うがいい!!」
「なめるなあぁぁぁーーーーー」

 圧力をかき消すようにブロスは気勢を上げる。
 うなりをあげる戦零機の咆吼が、遺跡を震撼させる。

「何者だ名乗れ貴様!?」

 不遜にも己に挑む謎の戦零機にドラゴは問いかける。
 このムスタバルは最強クラスの戦零機。
 それに挑むとは正気の沙汰ではありえない。

「私は……」

 ブロスは一瞬言葉につまる。しかし――

――ゴォっ!!

 ムスタバルの問いに
 ブロスは拳をつきだし答えた。

「インフェルノ仮面!!」

 その様子は威風堂々。微塵の躊躇も感じられない。
 静かに腰を落とし、ブロスは言った。

「私は愛の戦士インフェルノ仮面だ!!」

 正気ではなかった。

「な、なんだと!!」

 ドラゴは愛の戦士の気迫に気圧された。
 恐るべき気迫に気圧される。
 ドラゴは旋回した。

「貴様、強者だな!!」

「あぁ……」

 インフェルノ仮面は吠えた。

「強者だあぁぁぁぁーーーーー」

 吠えたけり、ブロスは突っ込んだ。

「ふしゅしゅしゅしゅ、おもしろぉい!変態仮面とやら、このムスタバル相手にどこまでやれるか! このドラゴ・ガトラーが見極めてくれるわ!」

 久しぶりの挑戦者に、ドラゴの血がたぎる。
 放たれる圧倒的なプレッシャー。
 インフェルノ仮面は相手の圧力に歯がみする。
 だが退かない退けない負けられない。

 「うおおおおぉぉーーーー」

 決意を新たにブロスは突撃する。

「くっ…!危ないな!」

 ブロスの凄まじい突進をドラゴは紙一重で避けた。

(なにっ)

 ドラゴが驚愕。
 攻撃をかすめた装甲から薄煙がたちのぼる。
 ブロスの攻撃には殺意を超えた何かを宿っていた。

「おもしろぉい」

 にやりとドラゴは笑みを深める。
 常人なら腰がぬけるようなブロスの一撃にたじろぐムスタバルではない。

 ――ブオオォ

 うなりをあげる戦零機の大音量。
 一気呵成にムスタバルが攻め込んでいく。

「ハッハァ−−−−」

 ムスタバルの超重量の一撃がインフェルノの装甲にめり込んだ。

「ぐううぅ……」

 走る激震。
 インフェルノ仮面が膝をおる。

「どうしたどうしたどうしたーーーその程度かーーーーー!!」

 ラッシュラッシュ。巨体が超重量の乱打を繰り出す。
 重さ速さ共に常軌を逸している。
 圧倒的な力量の前に、さしものインフェルノ仮面も追い詰められていく。

「ハッハァ――勝負あったな、インフェルノ仮面!!!」

 圧倒的な重量差。正面からの撃ち合いで勝てるものなど、宇宙にも殆ど存在しないのだ。

「この重量の前にはどんな戦零機も無意味ィィ!」

 ムスタバルが防戦一方のインフェルノ仮面に、雄叫びと一撃を振りおろした。

「ぐおおおおおお」

 ブロスは吹き飛んだ。
 マッチョは全力でインフェルノ仮面に一撃を加えた。

「インフェルノ仮面!お前は強い!! ああ強いぞ!!私のムスタバルが強すぎるのだ!!お前ほどの力を持つものだ、私との力の差がわからないわけはないだろう!」

「もう一度聞こう、なぜ私を狙ったぁ!!」
「知れた事ぉぉぉ!!」

 ムスタバルのプレッシャーをブロスは真っ向から受け止める。

「愛のためだあぁぁぁぁ!!」
「なにいいいぃぃぃー」

 雄叫びと共に、ブロスがぶちかます。
 全体重を乗せたインフェルの一撃がムスタバルを直撃した。それはさながら愛の特攻。
 鉄壁を誇ったムスタバルの体制がわずかに――崩れた。

(勝機!!)

 この鉄壁の戦零機が見せた唯一の隙。
 勝利へ続くわずかな糸をつかみぬく。
 インフェルノ仮面はわずかに崩れたムスタバルの巨体をわしづかんだ。
 ブロスは必殺の体制にはいる。

「きさまぁそれはまさか!?」

 ムスタバルが驚愕する。この超重量の戦零機を持ち上げるなど始めての事。
 規格外の所業にムスタバルは度肝をぬかれた。

「もう一度答えてやる!愛のためだぁぁぁぁーーーー」

 うなりをあげるエンシェントルーンの動力戸。
 その技こそ輝ける星を堕とすブロスの絶技。

「星落しだとおぉぉーーーーー」

 絶叫するドラゴ。
 それこそブロスの必殺の奥義。
 輝ける星を落とすブロスの業だ。

「ふううははははは、バぁカめぇーーー、その機体の質量でこのムスタバルを持ち上げるはずが……」

 彼我の重量差は圧倒的。インフェルノ仮面に対し、ムスタバルは圧倒的といっていいほどの重量級。彼我の差は歴然。持ち上げるはずがない。ないのに――。

「なん、だと」

 浮いている、ムスタバルの巨体が――

「浮いている、だと。馬鹿な、このムスタバルの重量は――」

 未知の技にドラゴは焦りを見せる。その焦りをあざわらうようにブロスは不敵に微笑んだ。体中が軋みをあげ血管がぶちきれる。だがブロス・ギブロスは揺らがない。

「この程度の重さがどおしたというのかね……」

 持ち上がっている、ゆっくりと。ムスタバルの巨体が宙に浮く。

「私の愛に勝る重さなどぉぉぉ……この地上にありはしなああぁぁぁい」

 叫んだ瞬間、正真正銘、両者は飛翔した。

「なんだとーーーーー」

 ドラゴの天地が逆転する。
 ありえない事象にドラゴは驚愕する。
 追い詰められたネズミが猫をかみ殺すがごとくの超常。
 その超常をこの変態仮面は実現したのだ。

「うおおおおおぉぉぉぉーーーーーー」

 ブロスが吠える。炸裂する星落し。
 この技のダメージは相手の重量に比例する――つまり。

 どがああああああああああん!

 世界がぶち壊れるような轟音が響く響く跳ね上がる。
 轟音を立て、遺跡が大きく震撼する。

「ぐはあああああああーーーーーーー」

 未知の衝撃にさしものドラゴも絶叫をあげた。
 唯一の勝機をブロスはつかみとった。
 ゴゴゴゴゴゴと音を立て遺跡が崩れていく。

「壊れてしまえ! メイルが私以外のおじさんといった遺跡など!!」

 ブロスの悲痛な叫びが遺跡を蹂躙する。

「ぐぬぬぅ、貴様ぁ」

 常人なら百回は死ぬであろう恐るべき衝撃にもドラゴは耐えきった。
 規格外のマッチョである。

「まだ原型が残っているとはな。だが私以外のおじさんは皆殺しだ」

 インフェルノ仮面が殺意を高めたその瞬間。

「ドラゴさん!?」

 メイルが現れた。

「めい、る……」

 なんといった、ドラゴさん、だと。ブロスさんではないのか!?
 メイルは傷を負ったドラゴにかけよった。

「大丈夫?ドラゴさん」

 メイルは傷だらけのドラゴにニアン【修復】をかけた。
 ブロスが怪我をした時によくかけてくれた、あのニアン【修復】だ。

「お、おおおぉぉぉ……」

 インフェルノ仮面の鋼の瞳から血の涙が出た。瞬間、

「むおおおおおおおおおおおおおおお」

 もう見ていられない。インフェルノ仮面は一気に飛び去った。

 あの仮面の機体は……
 メイルはニアン【修復】をかけつつ、よく知ったおじさんの姿を思い浮かべた。

 ◆

「ただいま、ブロスさん」

メイルが帰ってきたのは朝だった。

「…………」

ブロスはこたえない。
心が死んでしまったのだ。

「おかえりニアン【修復】」
「えっ……」
「おかえりニアン【修復】……好きな呪文はニアン【修復】だ」
「ぶ、ブロスさんどうしたの!?」
「なんでもないんだよ、メイルよ」
「そ、そうなの。だといいんだけど。あのね今日も私でかけなきゃなんだけど……
大丈夫おじさん?」
「大丈夫だよ、おじさんはいつでも大丈夫だよ。大丈夫じゃないときなんてないよ。絶対にだ」
「そ、そうなのおじさん」
「ところで、メイル。出かけるとは誰かと出かけるのかね」
「えっ……」

 ブロスの問いにメイルは少しもどろになった。ブロスの顔を見る。
 メイルは逡巡した後気遣うように、

「ち、違うよおじさん。一人で出かけるよ」

 メイルは言った。

「そうかわかったよメイル。いっておいで」
「う、うんブロスさん。今日中には帰るから安心してね」

 そういってメイルはいそいそと準備を始める。
 バタンとドアがしまる音がした。
 そして時間が経過する。3時間ほどブロスは微動だにしない。
 そして――

「いくか」

 ブロスは仮面をつける。狩りが始まるのだ。

 ◆

「こんにちはヘルダーさん」
「ああこんにちは、メイルちゃん。今日も可愛いね」
「か、からかわないでください。コホン、今日あなたに用があったのは……」
「わかっているさ、デコイ【複製】の習得、だね」
「はい、世の中いつ何が起こるかわからない。思いもしない強力な敵がいきなり現れる
事もあるんです。もっと強くなっておじさんの役に立ちたいんです」
「なるほど、小さいのに見上げた心がけだねメイルちゃん。よしわかった。このヘルダーおじさんが力を貸してやろう」
「あ、ありがとうございます。ヘルダーおじさん」
「じゃあ、奥にいこうかたっぷり教えてあげるよ」

 そうして二人は部屋に入っていった。

(……メイルよ……)

 天井裏でブロスがつぶやいた。

(これはやはりまさか、浮気か。2号どころか……3号だと!?)

 ブロスはメイルの行動に激しく心を揺さぶられる。
 今朝は心が死んでいたが、メイルの行動にグラングランと更に心が強まる。

(いや待て、まだ浮気と決まったわけではない)

 ブロスはギリギリの所で平常心を保った。
 そして奥から聞こえてきた。

 「ああぁぁん!!」

 それは喘ぎ声だった。もちろん、メイルの!!

(……心を塞ぐのだブロスよ)

「うわああぁぁ、入って、入ってくるううう。すごい!? これ凄いよぉぉおじさぁぁぁん」
「この中にはおじさんのがたっぷり詰まっているんだ。全部メイルちゃんに入れてあげよう……」
「だめぇぇぇ、これ以上はぁぁ、メイル壊れちゃうよおぉぉぉ」

 ガクガクと体が震えているような声。

「破壊しよう」

 心の中に激しい葛藤。今すぐこの場に出たいという欲求がブロスの心を激しく掻きむしる。
 しかし――今ブロスが現場にいってしまうと、

(皆殺しにしてしまうかもしれん)

 自分の心は今完全に暴走している。こんな状態で現場を見てしまうと、

(メイルまでこの手にかけるかもしれない)

 ブロスの葛藤をよそに、

「あぁっ……すごい……気もちい!入ってくるのいいよおぉぉ」
「ふふ、メイルちゃんも随分なじんできたよぉだね、じゃあもっと入れていくよ」
「はぁい、もっとくださぁい」

 限界だった。
 完全に感情を消し、ブロスはゆっくりと立ち去る。

(メイルは手にかけられない、メイルは手にかけられない。そう――)

(手にかけるのは……おじさんだけだ)

 ◆

「た、ただいまブロスさん」

 メイルが帰ってきたのは夜中だった。

「おかえりメイル」

 ブロスは優しく微笑んだ。何かを振り切った、ぶち切ったような優しく包み込むような笑顔だった。

「た、ただいま。ごめんねおじさん、遅くなっちゃって」
「全く気にしていないさ。さ、ご飯が出来ているよ。一緒にたべよう」
「う、うん……」

 そうして二人は席についた。
 ご飯を食べていく。

「メイル……」
「な、なにおじさん」
「最近、メイルに構ってやれなかったな」

 ブロスは優しい笑顔で見ている。

「そ、そんな事ないよおじさん」
「あるさ。だから反省の意味を込めて、プレゼントがあるんだ」
「プレゼント」
「ああ、プレゼントだ」
「ねぇねぇ、それってどんなものですかブロスさん」

 メイルがブロスに問う。ブロスはニッコリと微笑み

「――メイルが大好きなものだよ」

 優しい笑顔でそういった。感情が抜け落ちているかのような笑顔だった。

「明日の朝には届けよう。かさばる上に、生ものなのでね」
「嬉しいなおじさん。私ブロスさんの事大好き。あのね私もおじさんにプレゼントがあるの」
「そうか、嬉しいなメイル」

 優しい晩餐は終わった。

「じゃあ、お休みねブロスさん」

 メイルが寝室に入っていった。
 メイルなりにブロスに思う所があったのかもしれない。
 ブロスがプレゼントをするといった時のメイルの笑顔は嬉しさの中に安堵があった。
 その笑顔を思い返す。

(では……いくか……)

 ブロスはゆっくりと立ち上がる。空気が変わる。
 轟々と。

(おじさん狩りだ!!)

 立ちのぼる殺気。
 地獄が幕をあける。

 ◆

 朝日を浴び、メイルは目を覚ます。
 気持ちのいい朝だった。
 目覚めのいい朝。昨夜寝る前に嬉しい事を聞いたからだろう。

(プレゼント……ブロスさんからのプレゼント)

 ここ数日、ブロスと離れている機会が多かった。
 ブロスが気にしていたらどうしょうという心配があったため、ブロスの申し出は嬉しかった。

(よし、じゃあ私もブロスさんに何かプレゼントを――)

 プレゼント、を――あれ?

 視界に違和感が映った。
 なんでもない宿屋の風景。いつもの風景だ。
 降り注ぐ朝日、木の壁、太陽が射す天井。よく整えられたベッド。整理された机。
 大きな鏡。壁につきささったマッチョ。
 いつもの――

(床につきささったマッチョ!?)

 現実にありえないものを見た気がした。
 もう一度部屋を見回す。
 なんでもない宿屋の風景。いつもの風景だ。
 降り注ぐ朝日、木の壁、太陽が射す天井。よく整えられたベッド。整理された机。
 大きな鏡。壁につきささったマッチョ。

(――マッチョ!!マッチョが壁に突き刺さっている!!)

 メイルは驚愕する。心が濁流にのまれたかのようだ。ガタガタと体が震える。
 メイルは思い切って壁に突き刺さったマッチョを見た。
 その巨体は見覚えがある。血まみれでボッコボコ。あまり原形を留めていない。

(これはまさか、ドラゴさん!?)

 壁に突き刺さっていたマッチョは、数日前一緒に遺跡にいったドラゴ氏だった。

「ひいい」

 思わず声をあげた。
 しかし恐怖はそれだけではない。壁に突き刺さったドラゴの背に紙がついていた。
 おするおそるそれを読み上げる。そこには

「プレゼントforメイル」
「うわああああああああぁぁぁーーーーーー」

 メイルへのプレゼントだと、そう書かれていた。

「こ、これはまさか……」

(ブロスさんが……)

 思索はそこで中断される。
 ドサリと、何かが落ちてきた。
 人型のなにか。本能的にメイルはそれを見てしまう

「ヘ、ヘルダーさん!?」

 人型の何かは昨日、メイルが訪問したヘルダー氏だった。
 全身から血が流れ、プスプスと煙が立ちのぼっている。
 そして、これにも紙がついている。
 メイルはその内容を知っていた。それはもちろん

「――プレゼントforメイル」
「あああああぁぁぁぁぁーーーーーー」

 メイルは力いっぱい叫んだ。

「あっ! あっ! ああぁぁぁぁぁーーーーーー」

 崩れ落ち膝をつき声を上げた。
 心をがっしり鷲づかむ恐怖と衝撃。
 そして――

「やあ、気に入ってくれたかなメイル」

 優しい声が聞こえた。ブロスの声だ。

「マッチョとインテリは始末した」

 血まみれの壁と床をクイっと指さしブロスは言った。

「他のおじさんは殺す」

 ブロスは完全に人殺しの目だった。

「あっ……あっ……」

 メイルは後ずさる。

「そこに突き刺さっているドラゴが教えてくれたよ……おじさんパンデモニウムの事をな」
「おじさん……パンデモニウム」

「メイルの持っていた十八禁ゲーム。数々のおじさんを攻略するゲームの強化したもの。それは寝取られを含むえっぐい機能の実装だ。えっぐい機能を実装した上で、一癖も百癖もあるえっぐいおじさんとのえっぐい絆を紡ぎ上げる様はさながらおじさん万魔殿!!」

 ブロスの言葉に言葉にごくり、とメイルが息を飲む。

「たくさんのおじさんを攻略する、か……私もまたメイルにとってたくさんのおじさんの一人に過ぎなかったというわけだな」
「そ、そんな事はありません」
「しかし、ドラゴはこうも言っていた。そんなものはないと。そんなゲームは存在しないとな」
「そ、そうなのですか……」

 修羅場ながらメイルは少し落胆した。確かに怪しい話だとは思っていた。
 だが秘蔵の十八禁ゲームの強化はメイルの楽しみだったのだ。

「残念だったなメイル。たくさんのおじさんとの寝取り寝取られができなくて……私は心が痛んだのだよ。メイルのおじさんの一人として、メイルが悲しむのをな。たくさんのおじさんの一人として」
「ち、違うよ!ブロスさん!だいたいそれはゲームのはなしで!しかも私のプレイスタイルは、ブロスさん一筋っ!」
「違う事あるかああぁぁぁ!!」

 ブロスは激した。

「ひぃっ……」

 そのブロスの鬼気にメイルは黙り込む。

「だから私がおじさんを攻略してやったのさ……見ろ……この様子を」

 ブロスは劇役者のように手を広げ。今や惨劇の場と化した部屋を見回す。
 おじさんが突き刺さったり、おじさんが転がってたりする血まみれの部屋。
 すごいおじさん率。
 それはさながらおじさん万魔殿。

「喜べメイル。作ってやったのだ、おじさんパンデモニウムを……」
「そんな、これが……」
「そして私は、ドラゴをはじめとしたおじさんを攻略(物理的に)する上で、新しい必殺技を会得した」

 メイルはごくりと息を飲む。

「その技の名はおじさんパンデモニウム。これが、これこそがおじさんパンデモニウムだ。さぁメイル、これからそれをプレゼントしてやろう」

「いやああああああああああ!!」

 メイルは叫んだ。明らかにやばい技だ。

「逃げられないぞ、メイル」
「お、おじさん、話を聞いてください」
「聞く話などない!!」
「私は……おじパラの強化パーツ探しと……技を教わっていたのです」
「強化パーツと、技を……」

 生存本能のままにメイルは言葉を動かす。

「ドラゴさんからは、おじさんと遊ぶためのゲームの強化パーツを!!ヘルダーさんからは、おじさんと一緒に戦うためのデコイ【複製】の技を」
「嘘をつくなあぁぁーーーーーあの嬌声はなんだーーーーー」
「技を短期で習得するために、情報を回線で頭に直接流し込んだんです。そこに転がってるヘルダーさんの技情報です。刺激が強いんですが……全部ブロスさんのためなんです!」
「嘘をつくなぁぁぁーーーーー!!」

 ブロスはとっくに荒ぶっていた。

「おじさあぁぁん!!」
「もはやメイルのおじさんは私だけだ。逃げられんぞ、メイル」
「私はブロスさんを――」
「何もいうな」

 ブロスは血とおじさんにまみれた部屋を見回す。

「さぁ今から始めよう」

 星落としの体勢に入る。そしてブロスは力いっぱい言いきった。

「――おじさんパンデモニウムを」


 ◆ ◆ ◆
   END
 ◆ ◆ ◆

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