Loading...

ORIGINAL CONTENTS

連載中の一次創作作品です。

05: 両親を救え

《 前のページへ | INDEX | 次のページへ 》

「まさか本当に、飛空挺(シュガルラ)から脱出できるとは思いませんでした。ありがとう、ブロスさん」

 ブロスの駆る、黒鋼のライドギア・インフェルノに向かって、メイルが通信で呼びかけた。

「礼をいうのは、まだ早いぞ。追っ手が来た」

 背後から、女斥候たち――女戦闘員で構成された、オルター部隊の騎乗するエアバイクが追跡してきた。機動力を重視した軽装備の部隊。俊敏な動きで、エアバイクに搭載したバルカン砲により、四方から攻撃してくる。追撃に手間取る、ブロスとメイル。オルター部隊の女たちが、腰をグラインドさせ、旋回。二人を包囲すると、妖艶な笑みを口元に浮かべた。

「撃てーー!」

 次の瞬間、オルター部隊のバルカン砲が一斉に火を吹く。メイルの機体、スペリオールラグーンに放たれた。

「あぅうっ!」

 メイルは、至近距離からの攻撃に機体が傷つき、体制が揺らぐ。

「女相手はやりづらいが――ドラゴのオルター部隊だ。ためらいは死に繋がる」

 ブロスは意を決したように、メイルを一瞥する。目の前のオルター部隊の女達は美しく、彼女たちを傷つけるのははばかられる。しかしブロスには今、守るものがあった。誰かの為に戦うライダーとして。

 竜騎士の槍を手にしたインフェルノは、オルター部隊を渾身の力で薙ぎ払った。

「うああぁぁあっ!」

「あお゛んっ!?」

 次々と、インフェルノが振るう竜騎士の槍に、薙ぎ払われていくオルター部隊。
 彼女たちは、槍が纏う炎に包まれて苦悶する。エアバイクを破壊され、悲鳴を上げながら、豊かな肉体を負傷した者達が、夜の海へと落下していく。

 太陽を身を捧げたオルター(祭壇)部隊の女らしく、その下腹部に込めた魔力によって、ブロスを道連れに爆散しようと機体にせまってくる者もいるが、インフェルノの炎の呪文で遮られる。

「足止めはもういい、さがれオルター(祭壇)部隊!」

 その間に、背後からドラゴ将軍のライドギア・ムスタバルと、副官ヘルダーのライドギア・ヴィオーラが後を追ってきた。ムスタバルとヴィオーラの動きが、操縦核《ミッド・ギア》のアイ・ウィンドウに表示される。

 ムスタバルは爆裂する重力球を無数に、スペリオールラグーンとインフェルノに向けて打ち出してくる。器用に躱していく、スペリオールラグーンとインフェルノ。

 ムスタバルの巨躯は重量があるので、スピード面では身軽なヴィオーラに劣る。ヴィオーラがムスタバルを追い越し、ブロスのインフェルノに接近した。

「よくも先ほどは、ドラゴ様の腰巾着などといってくれたな!! マグネ《磁界》!!」

 ヘルダーが激昂してブロスに呪文を放った。強力な磁場が発生し、インフェルノがヴィオーラに引き寄せられる。

「腰巾着に、腰巾着といって何が悪い!」

「貴様!! 私はドラゴ様の右腕だ!! ドラゴ様に取り入る腰巾着などではない、信頼関係で結ばれているんだ!!」

 ヴィオーラの磁力で引き寄せられ、磁場の中心に行くほど、機体を圧迫される。すさまじい磁力を前に、インフェルノの外殻が破壊されつつあった。

「それは悪かったな。そんなに清い関係だとは知らなかった。だがヘルダー、お前にも知らないことがあるんじゃないのか?」

「なにっ!?」

「メイルではなく、私を追ってきたことが間違いだったな。磁力は加熱により分子配列が狂い、その力を失う。インフェルノの業火に焼き尽くされろ!! アグニ《爆炎》!!」

 磁力の中心に飲み込まれる寸前で、インフェルノは爆炎の呪文をヴィオーラに浴びせた。炎による熱で磁力が無効化され、爆炎に巻き込まれたヴィオーラは破損し、夜空を落下していった。

「ちっ、何をしているヘルダー!」

 ドラゴは舌打ちをすると、スペリオールラグーンを駆るメイルに向かって、ムスタバルを疾駆させた。スペリオールラグーンに打ち込まれる重力の重力球を器用にかわすメイルだが、他のライドギアが扱えるはずの呪文がないことが、スペリオールラグーンの弱みだった。

「スペリオールラグーン、呪文を! 私に呪文の力を!」

 メイルはそう念じて叫ぶと、脳裏に呪文の文字が流れる。スペリオールラグーンに促されるまま、メイルは呪文を唱えた。スペリオールラグーンの動力炉に、白光が収束される。

「焼き尽くせ! エンリ《光柱》!!」

 スペリオールラグーンが、ムスタバルに向かって、広範囲の光の柱を浴びせた。突然の呪文に面食らったムスタバルは、もろに攻撃を受け、破損し、よろけた。

 その隙に、ライドギアの出力を一気に上げて、ムスタバルとヴィオーラの二機を引き離す、スペリオールラグーンとインフェルノ。

「……あいつらはどこへ行く気だ? この方角は軍都ヴァルバのようだが――狙いは人質ふたりか」

 ドラゴ将軍がひとりごちた。それに応えるように言葉を重ねる、副官のヘルダー。

「ヴァラッドとセムは、封魔の御子の両親ですからね。ブロスの考えそうなことです。要塞都市であるヴァルバに、ライドギア二機で挑もうなど片腹痛い。行き先が同じなら、先回りして迎え撃ち、封魔の御子とブロスを確保しましょう」

「そうだな。ひとまず飛空艇(シュガルラ)に戻る。オルター部隊、撤退だ!」

「はっ! 了解であります、ドラゴ様!!」 

 ムスタバルとヴィオーラ、オルター部隊が、飛空艇(シュガルラ)へと撤退してゆく。飛空艇(シュガルラ)はメイルたちとは進路を変えて、夜空に消えた。


scene2

「撤退していきましたね……よかった」

 メイルとブロスは、夜空に消えた飛空艇(シュガルラ)を見送った。メイルは安堵し、ほっと胸をなでおろした。ブロスはなにか考えるように黙っていたが、メイルに向かって口を開いた。

「ドラゴたちが撤退したのは、先回りして我々を本部で向かえ撃つつもりだからだろうな。これから、軍都ヴァルバの要塞ジヴラルタへ向かうぞ。地下の拷問室に君の両親が囚われている」

 ブロスがインフェルノを疾駆させながら、通信でメイルに言った。メイルは、ブロスの言葉に息を飲む。

「拷問室……お父さんとお母さんは大丈夫でしょうか……? ひどい怪我をして痛い思いをしてるんじゃないでしょうか……」

 メイルの声音が震えていたので、ブロスがやりきれない表情になった。

「拷問室には、ふたりを死なせない処置として魔造細胞の人体パーツのストックがある。軍医と私が定期的にふたりの治療にあたっていたんだ。拷問室に着いたら、私が治療する。君は見ないほうがいいな」

 メイルは息を呑んだ後に、ブロスに訊いた。

「ブロスさんは、私のお父さんとお母さんと、仲が良かったんですよね……ふたりは、どんな方なんですか?」

「君が赤子の頃……君の両親、ヴァラッドとセムと私は、君をルインファルス(人工太陽)の部品にさせないために、ドラゴ将軍と戦い、敗れた。二人しか知らない、君の居場所を吐くよう、14年にもわたり拷問を受けていた。今回、君の居場所が突き止められたことについて、どうか二人を恨まないでやってほしい。尋問官には、精神を操る者もいる。本人の意志とは無関係に、君の居場所を吐かされた可能性が高い」

 ブロスの声音が、怒りを帯びている。メイルは、まだ見ぬ両親の話と、両親から自分へ向けられた愛に戸惑い、瞳に涙が滲んだ。

「お父さんとお母さんが、そんなことになっていたなんて。わ、私を守るために――」

「あの二人は、君が思っているより、ずっといい両親だったと思うぞ。なんでも、君のことを一番に考えていた」

 ブロスは、昔の二人の様子を思い出しているようだった。

「ジムダルに、私は花園のゆりかごに捨てられていたと訊いていたんです。だから私も、悲しくなるから、両親のことを考えないようにしていました。ジムダルが悲しむから言えなかったけど、ほんとうは……お父さんとお母さんに会いたかった。でも、二人がそんな事になっていたと知っていたら、私だけ、のうのうと……花園で暮らしていたくは……なかったです……」

 メイルが、罪悪感から、消え入りそうな声でいった。

「幸せだったのなら、その時のことをそんな風に言うな。君の両親は、ジムダル……いや、君と血の繋がったおじいさんと君が、平和に暮らしていることを誰よりも願っていたよ。ジムダルは、自分が祖父だと打ち明ければ、君が両親のことを訊いてくると思って、両親のことも、自身の素性についても、君が傷つかないように、隠して嘘をついていたんだ。私は、君の居場所のことは知らなかったが……こんな日がこないことを祈っていたよ」

「……ブロスさん。私のことを助けてくれて、ほんとうにありがとう。もしかして、私はブロスさんに、会ったことがあるんですか?」

「赤子の頃にな。セムに君を抱けとせがまれて、経験がないもんでどう抱いていいのかわからなくて困ったが、あの小さかった君がこんなに大きくなったとはな」

 通信の立体モニターに映った、ブロスの瞳が優しい。

「そうだったんですか……私のお母さんは、セムさんというんですね。ブロスさんから見て、どんな人でしたか? お父さん、ヴァラッドさんは?」

 ブロスが沈黙の後に、続けた。
 
「セムは、きれいな人だよ。あっ、いや、一般的に見てという意味だ。私には冷たいので、万人に優しいかはわからんが、君には間違いなく、優しいと思う。ヴァラッドは明るくて陽気なやつだよ。ヴァラッドも気が優しいな。酒が大好きで、細かいことを気にしないやつだから、未成年の君にも酒を勧めるおそれがある」
 
「私、緊張してうまく話せるかわからないけど……はやくお父さんとお母さんに会いたいです。ところで、私のお母さんはどうして、ブロスさんに冷たくするんですか?」

「えっ? いや! その、君のお母さんは、君のお父さんが大好きだから。ただの友人の私と仲良くして、お父さんに誤解されたら困るだろう? いろいろ……」

 アイ・ウィンドウに映る、ブロスの顔が若干赤いように見えた。メイルは目を丸くして、ブロスの気まずそうな横顔を見ている。

「……ブロスさんが、私や、私のお父さんとお母さんに、ここまでしてくれる理由がチョットわかった気がします……」

「妙な詮索はやめてほしい。……そろそろ、軍都ヴァルバだ。そういうわけだから、君の両親を助けにいこう。会えば、距離もすぐ縮まるさ」

「お父さんと、お母さんを助けた後、ブロスさんは、どうするんですか?」

「私か……ルインファルスの代替部品の研究をしなくてはならん。君を部品として使わないための。君は両親と、身を隠したほうがいいな。私は……やはりルインファルス(人工太陽)の開発に、研究者の矜持として関わると思う。後任のリーゼに背負い込ませるわけにもいかない」

「……ブロスさんは、脅されたりしていなかったら、お仕事自体は、好きだったですか?」

「……何も犠牲にならなかったら、やりがいのある仕事だったと思うよ。リーゼに言われたように、私も幼い頃から学者として人の役に立ちたいという気持ちがあったからね。だが一ついえるのは、今回のことで君が責任を感じることはないよ。どうにか、君無しでも動くように構築してみる……着いたぞ」

 眼前に、急峻な岩壁が広がる。ヴァルバ正規軍の要塞都市ジヴラルタだ。

「――この要塞都市には、20機のライドギア部隊。ウィツィロトの階級を持つさらに強力なライダーたち。ドラゴ将軍直属のオルター部隊がいる。戦闘になれば、ライドギアを所有していても厳しいものになると思うが、今回は軍の施設になるべく被害を出さないように、君の両親の救出を最優先に行う。ジヴラルタには要人用の抜け道があるので、そこから地下拷問室へ向かい、二人を助けよう。覚悟はいいな。頼りにしているぞメイル」

 ブロスが、メイルに微笑んだ。
 
「はい! 行きましょうブロスさん!」

 メイルが決意を固めたところで、アイ・ウィンドウにノイズが入る。砂嵐のあと、画面に、メイルにとって見知らぬ顔が映った。紫紺のギアスーツを着て、メイルより褪せた薄紅の髪と、無精髭を生やした、精悍で端正な顔つきの男性だった。


scene3

「……ブロスと、メイルだよな。聞こえるか? ヴァラッドだ」

 ブロスが驚いて、通信画面に向かって呼びかける。

「ヴァラッド!! 無事でよかった、今どこにいるんだ」

 ヴァラッドは、浮かない表情を見せる。短く、ヴァルバ正規軍の要塞ジヴラルタの入り口にいる、と応えた。

「……お前たちも無事で良かった。いいか。そのまま引き返して、逃げろ。ウィツィロトの追手のこない場所へ。ドラゴがお前たちを迎え撃って捕まえる準備をしている。準備というか、説得の用意だな。その一環が俺だ。説得を兼ねてお前たちと戦え、と、牢から出されて、セムを人質に取られた。お前たちが来なければ、ドラゴの用意も無駄に終わる。いいか、絶対に来るなよ」

 ヴァラッドの口調は、重い。

「何を言っている! お前とセムを助けに来たんだ、そのまま引き返せるわけがないだろう! メイルだってお前とセムに会いたいと言っていたんだぞ」

 ブロスが声を荒げると、ヴァラッドが口元を緩めて微笑んだ。

「――お前とメイルの通話を、サイレイドで傍受して聞いてたんだ。メイル、ありがとう。両親として何もしてやれなかった俺たちに会いたいといってくれて。ドラゴたちはメイルを力づくで確保しようとしている。メイルの性格ではそれに耐えられないだろう。俺とセムは、大丈夫だから。ブロスと安全なところへ逃げろ。いいなメイル」

 ヴァラッドが、優しそうな双眸をメイルに向けて微笑む。メイルの胸が詰まる。

「お、お父さん。ダメです。それはできません。私の居場所がわかって、軍隊がお父さんとお母さんの無事を確保している理由がなくなりました。わたしを捕まえるための利用されるか、私の居場所を隠していた反逆者として、最悪の場合、殺されてしまうかもしれません。ジムダルのように――。今から行きますから、一緒に安全な場所へ行きましょう……!」

 複雑な表情を浮かべるヴァラッドが映ったアイ・ウィンドウに、ノイズが幾千も重なる。

「――すまん。見回りに行くといって、持ち場から離れていたんだが、不審がられてヘルダーが来た。俺は戻るが、いいか。絶対に来るな。―――お前たち――と、戦い――たくな」

 通話に雑音が入った。

「貴――様―! 誰――と、今度は――もっ―と――強め――に―洗脳――、し――た――ドラゴ様」

 ヘルダー大佐の声が、とぎれとぎれに聞こえ、アイ・ウィンドウの映像はそこで途切れる。メイルは嫌な予感を打ち消すように、ブロスを見た。

「ブロスさん……、今のは――」

「……メイル。残念だが、行った先ではヴァラッドと戦うことになるかもしれん。ヴァラッドが、ヘルダーの能力による洗脳にかかっている可能性がある」

「洗脳――!? ……お父さんの洗脳を解くためには、ヘルダー大佐を倒せばいいのでしょうか」

 メイルは、私がヘルダー大佐を倒します、といわんばかりの剣幕でブロスに訊く。

「磁力による思考操作や洗脳には、炎――熱の力が有効だ。それは私がやる。急ごう」

 眼前には、急峻な崖が連なる地形に囲まれた軍都ヴァルバの、要塞都市ジヴラルタ。警報が鳴り響き、侵入者の存在を威嚇するように、サーチライトが夜空に幾閃も走っている。この厳重な警備の中に、両親がいるのだろうか。メイルは胸をぎゅっと押さえた。


scene4

「なんだあれは――!?」

 ブロスのライドギア・インフェルノと、メイルのライドギア・スペリオールラグーンが、炎と光の呪文で、要塞都市ジヴラルタのメインゲートを豪快に破壊し突破する。要塞の中には、20機のライドギア部隊がいた。

 ふたりを迎撃する、汎用ライドギア。交戦するブロスとメイル。20機が陣形を組むように、二人を器用に取り囲む。ライドギアに乗っているはずの軍人達の視線が、背後に向けられた。

「遅かったなブロス。封魔の御子。磁力が形作った、砂の巨人はインフェルノの炎では無効化しきれまい。大人しく捕まるがいい!」

 汎用ライドギアの背後には、ヘルダー大佐のライドギア・ヴィオーラがいた。

 広大な訓練場の地面の砂を磁力で操り、巨大な砂の巨人を作り上げている。砂が波立ちながら、中央のゴーレムに吸い寄せられていく。ゴーレム――、ヘルダーの面立ちによく似た、長い髪の砂像。それが、ブロスとメイルに、磁力をまとった砂塊を、容赦なく振りかぶった。

「きゃあっ!」

 磁力を纏った砂塊が、スペリオールラグーンを狙う。メイルの駆るスペリオールラグーンは、辛くもゴーレムの一撃を躱す。狙いを外した砂の巨人の腕は地面に溶け、再び砂となる。今度は、巨大な波と砂柱となって、砂の波がメイルを襲った。

「エンリ《光柱》――!」

 スペリオールラグーンは光の呪文で光柱を放ち、砂の波を貫いた。

 しかし、水面に石を投げるように、光の柱は、波紋となってあっけなく消えた。スペリオールラグーンが、大量の砂波に飲まれて姿を消す。

 次の瞬間、砂は一気に地面に引いていき、磁力の檻に囚われたスペリオールラグーンが現れた。

「メイル!!」

 ブロスが身動きの取れないスペリオールラグーンを見て叫んだ。

「ブロスさん、す、すいません……!!」

 メイルは、心底申し訳無さそうに、磁力の檻の中で身動きがとれないまま、言った。ヘルダーは、その様子を見てにやりと口角を上げる。

「封魔の御子は捕えたぞ。あとはブロス、お前だが――お前と私は、ライドギアの相性が悪い。お前の相手は、ヴァラッド大尉だ。ウィツィロトの兵士のな――! やれ!!」

「なにがウィツィロトの兵士だ、お前が洗脳したのだろう!!」

 上空から、魔力が圧縮されたプラズマのレーザーが幾閃も降り注ぐ。

「ヴァラッドの、サイレイドか!!」

 ヴァラッドの駆る、プラズマを操るライドギア・サイレイドによるものだった。

 直撃すれすれでプラズマ光線の雨を躱す、インフェルノ。サイレイドの、アスリートのように靭やかな機体の周囲には、衛星級のエネルギーの珠が浮いている。3つの珠からマイクロウェーブが発生し、珠の属性を持ったプラズマ魔術が展開する。

 ブロスは、サイレイドの姿を確認するなり、インフェルノの爆炎呪文を上空に向けて放つ。同時に、サイレイドも呪文を放った。

「アグニ《爆炎》!!」

「アクエリア《水爆の御柱》!!」

 インフェルノの炎に、水を纏ったプラズマ光柱が触れる。

 ヴァラッドに届く前に、一瞬で炎は消えたが、ブロスは怯まず、限界呪文の予備動作に入った。

(サイレイドの操縦核《ミッド・ギア》を包み込むだけの炎の熱があれば、磁力が熱で無効化されて、洗脳も解けるはず――!!)

 ブロスは、そう考えて、広範囲に展開されるインフェルノの限界呪文を唱えた。

「灼熱の焼却弾《ヒート・インシネレイション》!!」

 しかし次の瞬間。炎に包まれていたのは、ブロスの方だった。

 インフェルノの炎が、サイレイドの放つ火球に取り込まれて、威力を増して跳ね返されたのだ。炎に耐性のあるインフェルノなので、機体は無事だったものの、そうでなければ致命傷になりかねない一撃だった。

「くっ……やはり、サイレイド相手に炎で力押しは難しいか……!」

 ブロスは熱に包まれる操縦核《ミッド・ギア》で、苦悶の表情を浮かべる。

「ブロスよ、炎もプラズマの一種だ。プラズマを操るサイレイドに、炎は効かんぞ!!」

 サイレイドの放つ純プラズマの光閃を器用に躱すものの、苦戦しているインフェルノ。その様子を見て、得意になるヘルダーに、光の柱が直撃した。

「なにっ!?」

「あなたの相手は私です、ヘルダー大佐! ブロスさんの炎が効かなかったとしても、あなたを倒して、ライドギアの力を無効化させれば……お父さんにかけた磁力の洗脳もとけるはず!!」

 磁力の檻に囚われたメイルが、檻の中から光柱《エンリ》を放ったのだった。舌打ちするヘルダー。

「封魔の御子を傷つけるなとは言われているが――少し黙っていてもらおう! 幽世ノ陣《レグナント》:磁力女神カレンデュラ――、顕現せよ!!」

 ヘルダー大佐が唱える。その瞬間、メイルとヘルダーを含んだ空間が、磁力の世界に包まれていく。

 そこは、自然に囲まれた美しい空間だった。遠雷のように磁力が奔る空に、どこかノスタルジックな森の風景が広がる。鬱蒼と茂る木々や、一面に咲くカレンデュラの花の中央に。磁力で形作られた、ヘルダー大佐によく似た美しい女神が佇んでいる。女神はメイルに視線を向けると、恐ろしく整った微笑を浮かべた。

 幽世ノ陣《レグナント》は、召喚する者の心象風景に等しい。召喚者の心に焼き付いた風景か、心の状態が反映されることが多く、メイルはヘルダーの幽世ノ陣《レグナント》から、強い郷愁の念を感じた。中央にいる女神はヘルダーと縁深い女性なのだろうか。

「俺の幽世の陣《レグナント》は美しいだろう? 微力な磁力は植物の成長を促進させたり、生物の血行を促進させ老廃物を取り除くこともできる。女神カレンデュラは、磁力の癒やし手でもあるのだ。俺も、植物が好きでね。隠者の花園《ハーミット・ガーデン》で植物を操っていたジムダルのように、俺は強力な磁力を纏った植物を操ることができる! こんなふうにね!!」

「!!」

 中央の女神が、磁力を帯びた植物を操る。森から縦横無尽に伸びる樹木が、スペリオールラグーンに襲いかかった。スペリオールラグーンは攻撃を躱そうと空へ飛翔したが、迅速に伸びる蔓に両腕から半身を強く拘束される。半身が樹木に覆い尽くされ、その場から動けなくなったスペリオールラグーンに、ヘルダー大佐が言った。

「そのまま訊くんだ。君に問いたい。君の境遇には同情の余地がある。だが、部品になるのは封魔の御子である君にしかできない。君が部品になれば、大勢の生命が救われる。それでも部品になることを拒否するのかい?」

 ヘルダー大佐の口調は冷静そのものだった。メイルは、ヘルダー大佐の言葉に応えた。

「正直どうしたらいいのか、わかりません。でも護竜の人たちのことを考えたら、私が部品になるしかないんだと思ます…。だって、私にとって身近な人の命が大事なように、全ての護竜の人たちも同じだって思うから…」

 メイルは思っていることを、ヘルダー大佐に正直に話した。

「そういう気持ちが君にもあって安心したよ。――つらい決断だと思うが、部品になることを承諾してくれるね?」

 ヘルダー大佐の口調は限りなく優しかった。スペリオールラグーンを拘束する樹木の蔓からは微弱な磁力が発生している。これはヘルダー大佐の能力による問いかけなのだろうか。メイルは頷きそうになる自分自身に必死にあがらい、言った。

「私のために命がけで戦ってくれたジムダルを殺されて、両親までひどい目に合わせていたものの言いなりになるのは…いやです……。私を助けてくれたブロスさんも、職務に支障をきたしてまで私を逃してくれたんです…。ドラゴ将軍に従うのは、私を守ってくれたジムダルや両親やブロスさんを裏切ることになります」

「そうだな。君を探し出したり、捕えることに関してやり方に問題があったのは認めよう。だが時間がない。残酷な方法になったことを許してくれとは言わないが、そうするしかなかったということは、理解はしてほしい」

 メイルが、ジムダルの死を思い出して、無言になる。

「謝罪の言葉がほしいならいくらでも言おう。君につらい思いをさせてすまなかった。だが、君の意地を通して、逃げて一体何になる? 護竜から太陽の問題がなくなるわけでもないし、君がよその土地で平和に暮らしたいと願っても、素性が割れれば部品にならなかったことを護竜の民になじられるだろう。反逆者として追われることにもなる。両親を助けて逃げたところで、君たちが得るものはあるのか?」

「それは…」

「以前は却下されたが、ドラゴ将軍に両親との対面を口添えする。だからライドギアをしまって、軍に従ってくれないか。この幽世ノ陣《レグナント》の外にいる、君たちと戦う軍隊の者達も家族があるし、簡単に替えの効く人材じゃないんでね」

 ヘルダー大佐の言うことは、ヘルダー大佐の立場からは至極まっとうなことに思えた。

「もし、ブロスさんの代替部品の施策が間に合わない場合、私が部品になったら、ブロスさんと両親の無事を保証してくれますか? ジムダルのようにはしないと誓ってくれますか?」

 メイルはそういいながらも、ヘルダー大佐個人の意思と、軍の意向はまた別であるだろうと思っていた。何年も軍を欺きメイルを守っていた両親は反逆者と言われた。反逆者を軍は守ってくれるだろうか? 一度軍から離れたブロスも何らかの処罰は受けるだろう。しかしブロスが自分を使わない代替部品の施策に成功したら、それも免れるかもしれないし、ブロスもそのつもりでいる。その前にメイルが部品になると返事をするわけにはいかなかった。

「代替部品だと? ブロスはそんなことをいっているのか。それはすぐに出来るのかい? そんな不確かものを信じて、君に希望を見せるなど罪なことをする――そんな都合のいい話を信じるより、部品になってくれるね?」

 メイルの意思と反するように、唇が肯定の言葉を発しようとする。メイルにもはっきりわかるほどの、磁力での思考操作だった。

「部品になってくれるね?」

 ヘルダー大佐の語気が強くなる。メイルはすべてを否定したい意思を奮い立たせて、肯定の意思に逆らっていた。レグナントとは、顕現させる者の意思が色濃く働く空間。ヘルダー大佐がメイルとブロスを引き離してメイルをレグナントに閉じ込めたのは、メイルが先に部品になることを承諾すれば、人工太陽の開発責任者であるブロスも従わざるをえないからだろう。

「……お父さんとお母さんにも、同じことを言ったんですね。そうしてお父さんとお母さんは、私を守ろうとして、拒否してずっと拷問を受けていた」

 メイルは、同じ気持ちを味わったであろう両親の心を思って、涙を流した。

「私が従えば、十四年間この思いを味わってきた両親の思いが、全部無駄になります……部品になるのは……い…」

 身体が肯定以外の言葉を発するのを拒否する。それでも、メイルは言葉を振り絞った。

「いやです!!」

「言葉が違う。君の口にしていい言葉は『はい』だけだ。君を捕まえたり、人工太陽《ルインファルス》の開発には多大な犠牲を払っているんだ。君には『はい』といって、従う道しか残されていないんだよ」

 ヘルダー大佐の目に、獰猛な光が宿る。

「お父さんとお母さんが、一体何をしたっていうんですか! なんで私を守って拷問を受けないといけないんですか! ジムダルのことだって、殺す必要はあったんですか!?」

 ヘルダー大佐が、底冷えする声音で応えた。

「君の両親が世界に何をしたか教えてあげよう。5千人以上の無辜の民――なにも悪事など働いていない真面目な者たちを生贄として、君の14年の命と引換えに見殺しにした。拷問ごときで済んでいたことを、むしろ感謝してほしいくらいだよ。ジムダルは明確な敵意を持ってライドアで応戦してきた。ドラゴ将軍の対処は正しい」

「――っ!!」

 樹木の蔓の一つが、メイルの操縦核《ミッド・ギア》を貫いた。蔓がメイルの首を容赦なく締める。

「優しく言っているうちに、言葉を改めろよ。反逆者にここまで寛大な態度をとることは、通常ではありえない。ジムダルから外界のことを何も聞かされてないという君に、同情できるからこそ説得をと思ったのだが、甘ったれで腹が立ってきたよ。君は、公共精神や、自己犠牲の精神を持ち合わせていないのか?」

「……うぐぅ……!」

 メイルが酸欠状態になり、信じられない力で首に食い込む蔓を、どけようと必死にもがいている。

「言葉が出ないか。ただ、同じ条件で部品になるのは君だけでない。君と同い年のドラゴ将軍のご子息、降魔の御子――リュウ少尉もだ」

 メイルは、ドラゴ将軍を思い出し、息を呑んだ。

「君と違って、彼は大変いさぎがよかったぞ。父であるドラゴ将軍から事情を訊いて、顔色ひとつ使えずに『了解です』と応えた。軍人の鏡だよ。君以外にも、君と同じ辛い決断をした少年がいたということは、知っておいてほしいね」

 樹木の蔓が、メイルの腕や脚を貫く。

「ああああっ!!」

 メイルの腕や脚を貫いた箇所が、激痛とともに血を吹き出す。

「どうした。早く『はい』というんだ。いえば苦痛は終わるぞ。君は、君の両親並みに頑固だな。君の両親のヴァラッドやセムも、何をしても君の居場所を吐かなかったよ。何回瀕死にさせてもね。鋼の意思だよね。意思があっては逆効果だと、意識を失った際に思考を操作して、苦労したが機械で君の両親の記憶を覗いたんだ。君の居場所が割れたぞといったときの、二人の絶望的な顔は見ものだったよ」

「ううう、ううううーーーーっ!!!」

 メイルはすべてを否定したい気持ちになった。この気持ちを十四年も抱えてメイルを守っていた両親のことを考えると、涙がとめどなく溢れた。十四年、メイルを守って育ててくれたジムダルのことも。護竜にとって、メイルの大事な人たちは、そんなに簡単に在り方を否定されるほど、ちっぽけな存在なのだろうか。

 メイルは、今まで生きてきた世界を憎む気持ちとは無縁だった。メイルがジムダルの花園で今まで見てきた世界は、美しくて優しかったから。でもジムダルと暮らしていた世界はなくなって、残酷な世界が外側にあることを知った。でもその残酷な世界を生きる人を否定して、世界を憎もうとは思わなかった。ただ、自分のせいで大事な人が死んだり、苦痛を味わせてしまったことが、ただ辛かった。

『メイル。自然は本来、人間にとって美しくも優しくもないものだ。荒れ狂い、人間の命など一瞬で奪うこともある。優しく美しいのは、自然の持つ恐ろしさを理解して、畏れを持って接しているときだけだ』

 なぜだか、メイルは生前のジムダルの言葉を思い出していた。ジムダルが言っていたのは、人の作った世界ではない、本当に外側にある世界のことだが。メイルは世界と人間の残酷さを知って、人間と世界に恐れを持っていたら、今も世界は美しいままだっただろうかと、今となっては意味のないことを考えた。

「――なるほど。なかなかおもしろいことを考えるんだね。人間も、悪人と善人に別れているわけではない。命が危険にさらされると、生存本能の防衛機能が働き、身を守るために暴力的になったり、他者を傷つけたりする。それを理解して人と接するのが、ジムダルの言う『畏れ』だとしたら正しいね。何に対しても、正しく恐れ、敬う気持ちは大事だよ。人の国や街も、追い詰められると戦争が起きやすくなる。人間の生存本能に結びついた、悪の部分を自覚しながら人と接するのは大事なことだ」

「!?」

 メイルは、ヘルダー大佐に思考を読まれて、びくりと肩を震わせた。

「思考は電気信号だから、磁力の能力で、ある程度読み取ることが出来るのさ。ときに、君は自分が封魔の御子と呼ばれる所以を知っているのかい。その身に何を封じているのか」

 メイルは、腕と脚からおびただしい量の血液を流し、意識が朦朧としていた。

「君の身体の中には、ハイドラという古代の魔神の分体が封印されている。時の権力者に取り付き、心と五体を操る恐ろしい魔神が。君の封魔の血でハイドラは力を封じられて、君の心のなかにいる。君が意識を失ったり、血を失えば顕現しやすくなるらしい」

 ヘルダー大佐は、好奇心に満ちた目でメイルを見ている。

「先ほどいったが、ハイドラは人の心や五体を、自分に都合のいいように操る。君は、自分の家族が命がけで君を助けていると思っているが、本当にそう思うかい? 君の中にいるハイドラが、依代である君の生命を維持するように、周りを操っているとしたら? 心臓を壊すほど魔力を酷使して君を守っていたジムダルも。十四年も君の居場所を吐かずに拷問を受け続けた君の両親も。会ったばかりの君と軍隊を脱走したブロスもだ。ブロスに至っては、他人なのに君に協力的すぎるだろう? おかしいと思わないか?」

「……あ……あ……」

 出血多量により、メイルの意識はなくなりかけていた。ヘルダー大佐の話も、半分も理解できていない。

「それに、古代の魔神ハイドラと、俺の磁力女神カレンデュラ――、どちらが強いか興味あるな」

 ヘルダー大佐の目に、獰猛な光がぎらついている。当初の優しげな雰囲気は消え失せていた。

「……」

 メイルは、搭乗核《ミッド・ギア》の中で、血を流しながら気を失っていた。気を失う前に、魔神ハイドラ、という単語だけが頭に響いた。そして、暗い意識の中に落ちてゆくなか。意識の深淵の中に、見たこともない、闇に染まった自分自身がいた。

「――わたし?」

 そこには、もうひとりのメイルがいた。瞳が白目まで真っ黒で、青白い肌に黒いギアスーツを着ている。メイルが今まで意識してこなかった、魔神ハイドラという、メイルの生存本能に生きる悪なのだろうか――。メイルは、気を失う間際にそう思った。

『――封魔の祝詞《シィル・マギア》』

 気を失ったはずのメイルの唇が、封魔の呪文を唱えた。本来なら、その封魔の呪文の一言で、幽世ノ陣《レグナント》は解除され、元の空間にもどるはずだった。しかし、中和しきれない魔力が、ヘルダー大佐の操る磁力女神カレンデュラから迸る。ヘルダー大佐は、この時を待っていたといわんばかりに、限界呪文の予備動作に入った。

「人工太陽《ルインファルス》計画の、唯一の懸念点。それは封魔の御子の中に封印された魔神ハイドラによる、魔力の暴走。計画への憂いはここで断ち切る! カレンデュラは、俺の魂の片割れ! 磁力の女神カレンデュラよ、魔神ハイドラを消滅させろ!!」

 ヘルダー大佐には年の近い、仲の良い妹がいた。故郷の戦都エスカデの指輪狩りで亡くした妹だが、死後はヘルダー大佐の幽世ノ陣《レグナント》の住人となり、兄のヘルダー大佐に力を貸している。ヘルダー大佐とは別の魂、霊界にある己の魂から魔力を発しているカレンデュラ。幽界で召喚主の心象風景を顕現させるレグナントにおいて、神に等しい存在になっている。戦都エスカデでは治療師だったヘルダーとカレンデュラだが、その力を攻撃に転じた時の威力は凄まじかった。

「落千なる磁力砲《マグネフォース・チャリオット》!!!」

 ヘルダー大佐が、磁力のライドギア・ヴィオーラの限界呪文を発する。瞬間、空に遠雷のように磁力が奔り、磁力女神カレンデュラは電磁砲となる。弩級の磁力を放出。幽世ノ陣《レグナント》内の樹木たちが高エネルギーによってなぎ倒され、軌道上の草原が、全て消し飛ぶ。磁力砲は、メイルの乗るスペリオールラグーンに直撃した。

『――封魔の祝詞《シィル・マギア》』

 メイルの唇が、再び、封魔の呪文を唱える。

 一瞬で、磁力砲が封魔の能力により無効化されて、消滅した。

「ばかな――!? あの攻撃を無効化するとは――! だが俺の幽世ノ陣《レグナント》に力を貸しているカレンデュラは破れんぞ。もはやカレンデュラは神の一柱に等しいのだ」

封殺された磁力砲を見て、ヘルダーが舌打ちをする。封魔の能力は、相手の魔力による能力を無効化したまま、己だけは魔力を使役できるという、戦場において無敵に近い能力だ。魔神ハイドラが顕現したメイルが、闇の呪文を唱える。

『――闇落の戦火《ルーガス・レイン》』

 スペリオールラグーンから奔った複数の黒い柱の群れ。その一つに触れた女神カレンデュラが、劈(つんざ)くような悲鳴をあげて、跡形もなく消滅した。一瞬で、己の神を失い、唖然とするヘルダー。その時、気を失っているはずのメイルの唇が、ゆっくり言葉を紡いだ。

『――畏れが必要なのは、神に対しても同様だ。神が慈悲深く見えるのは、畏れを持って接したときだけだ。お前は私に踏み込みすぎた』 

 メイルは真っ暗な瞳を見開き、再び闇の呪文を唱えた。だが、その呪文がヘルダー大佐の耳に届くことはなかった。

 ヘルダー大佐は、己の幽世ノ陣《レグナント》の中で。胸に大穴が空き、口からどろりとした血の塊を吐く。スペリオールラグーンは、黒い柱を幽世ノ陣《レグナント》に一斉に放ち、至るところに穴の空いた空間は、ひび割れ、儚く消えた。

《 前のページへ | INDEX | 次のページへ 》